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「子育てしながらタイトル戦」「師匠にやっと良い報告が」美しい盤上のドラマを描く女流棋士…夫は“20歳上のコーチ”、薄ピンク髪の22歳新鋭も
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田丸昇Noboru Tamaru
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/07/17 06:00
清麗戦の番勝負に臨んでいる福間香奈と渡部愛は、女流順位戦でそれぞれ白玲挑戦、A級昇級を決めた
最終戦時点で、0勝8敗の和田あき女流二段(27)は降級がすでに決まっていた。残り1枠は、2勝6敗の香川愛生女流四段(32)が和田に敗れて降級した。
米長邦雄永世棋聖は生前に「相手の大事な一番こそ全力で戦え」と提唱し、実際に公式戦で実践した。和田がそんな思いで指したかどうかは不明だが――どんな状況でも盤に向かえば全力で戦うのが棋士の本分だ。その意味で加藤圭も同じような立場だったが、鈴木に勝ったことでA級に残留できた(香川と同成績ながら順位上位)。
加藤圭女流二段は大学院を修了後、志望していた臨床心理士の受験をせずに、26歳で女流棋士になった遅咲きだ。しかし独特の勝負術を駆使して好成績を収めていて、白玲戦では第2期から4期A級に在籍している。目立つことと話すのが苦手で、対局以外の仕事はしないという「謎多き女流棋士」である。
“20歳上の棋士と結婚”渡部がA級昇級
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【B級 定員は10人で各9局。昇級2人、降級3人】
A級へ昇級したのは、9勝0敗の渡部愛女流四段(32=※日本女子プロ将棋協会/LPSA所属)、8勝1敗の野原未蘭女流二段(21)。ダントツの成績だった。
渡部は10年ほど前から同じ北海道出身の野月浩貴八段(52)に指導を受けていた縁で、昨年1月に結婚した。ともに北海道コンサドーレ札幌のサポーター。新婚旅行を繰り返すように、全国各地のサッカー場を回って応援している。渡部は大成建設杯第7期清麗戦で挑戦者になり、7月から福間清麗と五番勝負を行っている。
野原は法政大学に在学しながら、対局、指導、将棋イベントに出演など、幅広く活動している。最近は対局でネイルアートを施すこともある。両親が新婚旅行でイタリア・ミラノに行って感動したので、未蘭(みらん)と名付けられた。
C級に降級したのは、3勝6敗の岩根忍女流三段(44)、頼本奈菜女流二段(28)、2勝7敗の武富礼衣女流二段(26)。千葉涼子女流四段(45)は最終戦で武富に勝って3勝6敗とし、岩根と頼本より順位上位によって残留できた。
筆者の弟子が昇級「師匠にやっと良い報告が」
【C級 定員は20人で各8局。昇級3人、降級4人】
C級にはタイトル戦経験者(計7人)、中堅棋士、20歳前後の若手棋士などが混在している。
B級に昇級したのは、7勝1敗の中村真梨花女流四段(38)、清水市代女流七段(56)、小高佐季子女流初段(23)。中村は2023年9月に千田翔太八段(31)と結婚した。その千田は24年に順位戦でA級に昇級し、夫婦ともに好調である。千田は年上妻について、「ゆったりとしているが、仕事はきっちりやる。自分よりも他人を優先するのが魅力」と語った。中村は7月から10月まで出産のために休場する。
清水は6月の将棋連盟総会で、女流棋士として会長に初めて就任した。最終戦の終局後、次のように率直な心境を語った。


