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「投手・大谷翔平、いまはまだ“リハビリ期間”だね」NHK解説者が絶賛する、ドジャース大谷“3つの変化”「手術前より良くなった“左手”」
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遠藤修哉Naoya Endo
photograph byGetty Images
posted2025/07/14 17:00
12日のジャイアンツ戦。復帰後最長の3回、36球を投げて4奪三振、無失点に抑えた大谷翔平(31歳)
実際、登板を重ねるごとに内容は向上。縦に大きく変化するスライダーはフォークの代用にもなり、打者を翻弄している。
「80センチくらい落ちる縦スラ(イダー)に加えて、エンゼルス時代に少し投げていたシンカーも復帰1試合目では多く投げていたね。やはり先発として長いイニングを投げるには、打たせて取る必要がある。そのための球種の選択だろう。俺も晩年は球数を減らす投球を意識して、カットボールを多投したりしていたよ」
30代を迎えた投手として、単なる速球派ではなく「効率の良い投球」を志向する姿勢が見て取れる。とくに右打者への高い被打率の対策として、シンカーやツーシームを取り入れる工夫も見せた。
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「実は、今の野球って左打者ばかりでしょ? 左打者を抑えないと先発としては長く投げられない。しかし、打順に5~6人はいる左打者を抑えることばかり考えると、右打者の攻め方が甘くなるんだよ。実は俺もそうだった。先発したとき、左打者を意識しすぎて、右打者の攻め方が分からなくなってしまった。バランスを取るのは難しいんですよ」
そういった面でシンカーが有効になってくるという。
「左打者にとっては、右投手はインコースに投げてくるってイメージがあるんで、抑えられるんですよ。でも、その感じで投げていると、右打者はちょっと甘いとこにいくと打たれてしまう。右打者をどうやって抑えたらいいかと考えると、内角に食い込むツーシームか、シンカーみたいなシュート系になる。それが長く投げるために手っ取り早いのかなとは思う」
【3】「フォームが変わった」
フォームの面では、従来のセットポジションからノーワインドアップでの投球が増えているが、これはどういった狙いなのか。
「コントロール重視ならセットポジションのほうがいいんだけど、反動を使いつつ、リズム良く、足を上げるタイミングを合わせるためじゃないかな。みていると今はノーワインドアップのほうが投げやすいようにも見えるよね。実際、セットポジションのグラブの位置だって毎年変える人もいる。でも、みんなが思っているほど本人は気にしてないと思うよ。今のフォームがしっくりきてるんだろうね。投げてる姿を見ていても、リズムがいい」
プレートの踏む位置──つまり立ち位置の変化も見逃せない。ノーワインドアップは投球動作に入る際、プレートに置く足の位置を、セットポジションに比べて自由に選べるメリットもある。実際大谷の投球をみると柔軟に変えている印象があった。
「マウンドの右と左で、見える景色は全然違う。俺は三塁側しか踏めなかった。両方使える大谷はすごい。しかも、それが自然にできているのがまたすごいよね」
「いまはまだ“リハビリ期間”なんだよ」
また、投球から打席への移行も特異だ。投手として1イニングを終えた直後、すぐにDHとして打席に立つ大谷の姿は「高校野球のよう」だと武田は笑う。


