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「自分の声を聞いてもらう機会もなかった」パリ五輪を辞退した女子体操・宮田笙子が“本当に伝えたかったこと”「辛辣な言葉もあるけど…」《60分インタビュー》
text by

矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto
posted2025/07/24 11:01
2024年の経験を経て、新たな挑戦の道を歩み始めた女子体操・宮田笙子(20歳)のインタビュー(第2回/全3回)
そして、パリから帰国してしばらくたった8月のある日、練習拠点のひとつだった鯖江市に行くと、そこには自身とともに国民スポーツ大会の福井県代表メンバーに選ばれている深沢もいた。
「私が高校生だった時から日本の中で引っ張る立場として頑張ってきたのがこころさん。一緒にいると楽しいですし、自分がネガティブになりそうな時に掛けてくれる声がいつも明るくて励まされました」
国を代表して国際大会に出るアスリートが行動規範を守るべきであるのは当たり前のこと。しかしながら一方で、オリンピック出場辞退という前例のない結論はあまりに厳しすぎるのではないかという世間の声は少なくなかった。宮田のもとには温かいメッセージも多く届いた。
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「今まで応援してくれてた人が、変わらず応援していますよと書いて送ってくれたメッセージもありましたし、逆にいろいろとあった中で私の名前を知ってくれて、それから演技を見てくれて好きになってくれた人もいます。もちろん、中にはきつい言葉もありましたが、ファンの温かみを感じたというのが率直な思いです」
「自分の声を聞いてもらう機会もなかった」
周囲の励ましにも背中を押され、勇気を振り絞って出場した国スポ。すると、意外なほど多くの温かい反応が寄せられた。メッセージも増えた。
「SNSで辛辣な言葉をぶつけられることはちょくちょくあるけど、そういうのを気にすることはないと言ってくれる人は多いですし、国スポの時は試合が終わった後にいろいろな人が話しかけに来てくれて、憧れの気持ちを伝えてくれる選手もいました。応援してくれる人たちのためにも自分が楽しんで体操をする姿を見に来てもらいたいという気持ちになりました」
パリ五輪出場辞退について正直に言えば「自分の声を多くの人に聞いてもらう機会もなかったし、納得いかなかった部分や不信感もあった」ともいう。
「でも、結局体操が好きとなると、そこに向き合っていくしかない。人がしないような経験をすることによってより強くなれるし、いろんな人の気持ちに寄り添えるようになるんじゃないかなっていうのも感じます。いろんな思いはあったけど、順大の人たちを含めて感謝する気持ちになる人は多かったです」

