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「ゾーンで勝負したら打ち損じてくれるかも…」カープ投手陣の“ジョーカー的存在”森浦大輔が、ひとり群れずに追求する理想像とは
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前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/07 06:00
森浦は2020年のドラフト2位入団。初年度から一軍でホールドを記録するなど活躍を続けている
「『マウンドに上がったら勝手に力出るわ』と思って、ブルペンでガッとは(気持ちを)入れないですね。入っちゃったら周りが見られなくなるような気がするんです。マウンドでの投球練習で勝手に(スイッチが)入っていく感じです」
多くを語らず、表情にも出さない。そんな姿はチームには頼もしく、相手には不気味に見える。ブルペン担当の菊地原毅投手コーチの目には、背番号13の後ろ姿がこう映る。
「走者がいる状況で送り出しても、スッと試合に入っていける。普段はおとなしいけど、マウンド上では自分をしっかり表現できる。芯の強さを感じる」
怖がらずにゾーンで勝負
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どんな場面でもストライク先行で勝負ができる。それもまた森浦の大きな武器だ。「ストライク先行の重要性」は分かっていても実践するのは難しい。1球が勝敗を左右する試合終盤ではなおさらだが、今季の森浦はストライク率64%という数字を残している。
「オープン戦からずっと(ストライク)ゾーンで勝負していこうと思っていました。調子が悪くても、とりあえずゾーンで勝負したら打ち損じてくれるかもしれない。怖さはあまり考えないようにしています。考えても結果は分からないので」
“魔球”チェンジアップに球の出どころが見えにくいフォーム、そして強靱なメンタル。それが森浦大輔という投手のすべてだ。
7月戦線で首位阪神を追う広島は今季も接戦が目立つ。だが守護神の栗林が不調で、代わって抑えを務めるテイラー・ハーンも本調子とは言い切れない。勝ちパターンの中核が揺れる中、森浦は島内颯太郎、中崎翔太らとともにリリーフ陣を支える。
カードゲームにおける「ジョーカー」の価値は、手札の強さによってさらに高まる。栗林やハーンが本来の姿を取り戻したとき、森浦の存在感はよりいっそう増していくはずだ。
