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「試行錯誤を繰り返すしかない」カープの期待の星、23年ドラ1右腕・常広羽也斗が直面している“壁”の正体とは

posted2025/06/09 11:00

 
「試行錯誤を繰り返すしかない」カープの期待の星、23年ドラ1右腕・常広羽也斗が直面している“壁”の正体とは<Number Web> photograph by JIJI PRESS

今春のキャンプ中の投球では高い評価を得ていた常広

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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 梅雨雲が覆う空のように、常広羽也斗の心にも晴れ間の見えない日々が続いている。交流戦が始まり、シーズンは中盤にさしかかろうとしているが、常広は一度も一軍に昇格することなく二軍での日々が続いている。5月までウエスタン・リーグ9試合に登板して1勝6敗、防御率4.37。行く手を阻むのは、ときがたてば自然と流れゆく雲のような存在ではない。自らの力で払いのけなければいけない壁なのだ。

 限られた選手だけが背負える使命が、常広には課せられている。2023年のドラフトで楽天との競合の末に1位で広島に入団。1年目の昨季は調整遅れがありながらもシーズン終盤に初登板初先発で初勝利を手にし、登板数こそ2試合に終わったが力の片鱗を示した。

 新たなシーズンを前に、その期待値はさらに膨らんだ。ブルペンでの投球には角度があり、真っすぐ伸びる軌道には見る者をうならせるものがあった。実戦形式でも打者のバットを押し込み、モノの違いを見せた。広島キャンプを視察した評論家たちは、オフにオリックスへFA移籍した「ポスト九里(亜蓮)」の筆頭候補に名を挙げるなど、評価はうなぎ上り。そして、侍ジャパン井端弘和監督の目にも留まり、3月のオランダ代表との親善試合に臨む日本代表に選出されるまでになった。

シーズン直前のつまずき

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 侍ジャパンから戻り、3月12日の春季教育リーグ登板では無失点投球。チーム内でも、まだ3枠が不確定だった開幕ローテ争いで優位に立っていた。しかし、開幕前最後の先発登板で課題を露呈する。3月18日の西武とのオープン戦では1回に先頭から3連打で2点を失うと、その後は追加点こそ防いだもののマウンドで打者と戦えていないように見えた。5回7安打3四死2失点の数字以上に、投球内容が評価を下げた。一定の結果を残せば開幕ローテ入りとみられていた中で、開幕ローテ入りを逃し、シーズンを二軍で迎えることとなった。

 今季公式戦初登板となった3月29日のウエスタン・リーグ中日戦は、涌井秀章との投げ合いに敗れたものの、6回1失点に抑えた。続く4月5日のオリックス戦では6回6安打無失点で勝ち投手となった。防御率0.75の滑り出しも、常広のポテンシャルを考えれば驚きはない。

 だが、3戦目から雲行きが怪しくなった。打者を圧倒する投球を見せたかと思えば、突如として連打を食らい、制球を乱す場面が目立つようになった。日単位ではなく、イニング単位によってまったく違う投手のようになる。5月までに9試合に登板。投じた45回1/3で失点したイニングは12度あり、そのうち実に半数以上の7度が複数失点(3、4、4、2、4、3、6点)だ。被本塁打による失点は、この中に含まれない。

 打たれ出すと止まらない──。5月22日のウエスタン・リーグくふうハヤテ戦での投球は、今季の常広を象徴するようだった。4回まで5安打を許しながらも無失点にしのいだが、5回は1死から二塁打を皮切りに、5連打など打者一巡で6失点。マウンド上で、投球だけでなく自分自身をもコントロールできていない弱さを露呈した。

【次ページ】 1年間ローテを守るための挑戦

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