「ゾーンで勝負したら打ち損じてくれるかも…」カープ投手陣の“ジョーカー的存在”森浦大輔が、ひとり群れずに追求する理想像とは 

　このフォームの再現性の高さは日々の積み重ねによるものだ。近年ではシーズンオフに他球団の選手と合同トレーニングを行うケースも増えているが、森浦はひとり黙々と自らのメニューに取り組む姿が印象的だ。練習拠点は基本、本拠地マツダスタジアム。誰かと群れることはなく、キャッチボール相手も球場内で自ら見つける。自分で課題と向き合い、明確な目的意識を持ってフォームに磨きをかけてきた。

　再現性とは同じ動作を繰り返す中で細かな修正を加えて高めていくものと思っていたが、そう単純でもない。シーズン中の練習でキャッチボール相手を務める栗林良吏はこう語る。

「シーズン中でもキャッチボールでいろいろ試している。普通は調子が悪くなったら何か変えようとするけど、森浦は調子に関係なく、より良くしようと常に変化を求めている。その感覚を練習ですり合わせられるのはすごいし、ダメだったら切り捨てることもできる。だから引き出しが多くて、自分にいいものを見つけられるのだと思う」

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　栗林は森浦と同期入団。多くの時間を過ごしてきた年下左腕の成長を感じつつ、刺激を受けてきた。

2022年には日本代表に選出され、強化試合のオーストラリア戦に登板した　©JIJI PRESS

試行錯誤の先にある進化

　森浦は目先の結果だけを見ているのではなく、その先の未来像をイメージしている。

「もっといい球を投げられるんじゃないかと、やっているだけなんです。たとえ、試して違うなと思ったら『これアカンかったな』と、やらんかったらいいだけなので。それが分かるだけでも選択肢が絞れるので、プラスに考えられる」

　そんな研鑽の成果もあり、ストレートの球威も増している。平均球速が上がったことで、ストレートとチェンジアップの奥行きが増した。奪三振率は自身初の2桁10.24をキープ。ここまで33奪三振のうち、チェンジアップで15個、ストレートで16個の三振を奪っている。

　ブルペンの語源は「闘牛場の牛舎」。投手たちはそこで戦う体をつくり、闘争心を駆り立てて戦場へと向かう。ただ、森浦はそこに至るまで気持ちを高めない。

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