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「ゾーンで勝負したら打ち損じてくれるかも…」カープ投手陣の“ジョーカー的存在”森浦大輔が、ひとり群れずに追求する理想像とは
posted2025/07/07 06:00

森浦は2020年のドラフト2位入団。初年度から一軍でホールドを記録するなど活躍を続けている
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前原淳Jun Maehara
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JIJI PRESS
僅差の試合終盤。継投勝負はまるでカードゲームのようだ。豊富なリリーバーをそろえる広島中継ぎ陣の中でも、森浦大輔は異彩を放つ。これほど頼りになるカードは、ほかにない。
7月2日時点でチームはシーズン折り返しとなる72試合を消化し、森浦は32試合に登板。すでに昨季を上回る19ホールドを記録している。キャリアハイを上回るペースでの登板は、首脳陣の信頼の証だ。昨季までブルペン担当、今季からベンチを預かる永川勝浩投手コーチは、その存在をカードゲームにたとえて称える。
「いつマウンドに送り出しても、フォアボールでピンチをつくる不安がない。三振もとれるから回の途中でも任せられる。ジョーカー的な使い方ができる。勝ちパターンにおいて今は大輔の存在がすごく大きい」
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使われどころは多岐にわたる。僅差でリードしている場面が中心とはいえ、ビハインドの展開やイニングまたぎ、さらにはイニングの途中など、あらゆる場面でマウンドに上がってきた。現在は勝ちパターンの一角としての役割に加え、ほかの勝ちパターンの“バックアップ”まで任せられるほどの信頼を得ている。試合の最後を締めくくるストッパーが「最強のカード」なら、どんな状況でも投入できる「ジョーカー」もまた、勝利に導く重要なカードとなりうる。
代名詞はチェンジアップ
森浦の代名詞といえばチェンジアップだ。ストレートと同じ強い腕の振りから放たれる“魔球”は、鋭くブレーキが効き、制球力も高い。
テイクバックが小さく球の出どころが見えにくいフォームも、その効力を高めている。打者には森浦の左腕がリリース直前まで見えず、18.44mより近く感じるという。20km以上ある球速差に加えフォームでも緩急をつけ、打者を惑わせている。