- #1
- #2
バレーボールPRESSBACK NUMBER
「祐希さんや藍と比べるつもりない」男子バレー大塚達宣(24歳)イタリアで到達した新境地とは?「評価が下がるのを怖がっている自分がいました」
text by

米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byTakahisa Hirano/AFLO
posted2025/07/01 11:01
ネットを挟んで石川祐希(左)と言葉をかわす大塚達宣
今年3月のミラノでの取材時には「今は、楽するところは結構楽してますよ」と笑っていた。
「楽するのと、サボるのは別だなと思ったので。だから午前練習がない時は、朝ゆっくり寝てもいいし。でも結局自分は、バレーや練習に必要だと思うことは、ちゃんとやるタイプなんです。夜ご飯作るの面倒くさいなーと思う日もあるんですけど、ここでちゃんとご飯とお肉と野菜を摂っとかないと、次の日の練習でしんどいなとか、『痛い目にあうんは自分やな』と思うから、やるんです。
最初来たばかりの頃みたいに、ストレッチせなあかん、イタリア語勉強せなあかん、と思ってやるんじゃなく、『明日筋肉痛が残るのが嫌やからちゃんとストレッチやっとこう』とか、『勉強をサボってたら、チームメイトと話せなくて嫌な気持ちになるのは自分やから、毎日勉強しよう』って。必要だと思うことはちゃんとやっているので、結局やっていること自体は来たばかりの頃と変わらないんですけど、メンタリティとモチベーションが違うんです」
ADVERTISEMENT
しかもイタリアでは日常生活の中にも成長や達成感があった。
「日本だと、『これができるようになった』という刺激や達成感って、バレーの中でしか得られない。生活には何のストレスもないので。でもこっちだとバレー以外でも、イタリア語をちょっとでも話せるようになったら達成感があるし、普段の生活でも、簡単なことですけど、例えば一人で地下鉄に乗れたとか、一人で街の中心まで行ったとか、スーパーで買い物ができたとか、本当にちょっとしたことでも成功体験が全部刺激になるし、自信になるんです」
「日本代表でも同じメンタリティでいたい」
そんな充実したイタリアでのシーズンを過ごす中で、「バレーボールに対する向き合い方が、よりクリアになった」と言う。
「純粋に、自分が強くなりたいという思いだけで今やっています。日本代表でも同じメンタリティでいたいなと思いますね。今まではどうしても、例えば大学の代表として、所属チームの代表として(日本代表に)選んでもらって、そこで頑張ってA代表に残ることが、使命じゃないですけど、そんなところがありました。でも今は純粋に、自分が強くなるために練習している。矛先がバレーと自分に向いているんです。
日本代表の環境はストレスを感じる環境でもあります。やっぱりメンバーに選ばれるかどうかというのがありますし、スタメンで出たい気持ちがないわけがないので。でも14人、12人に選ばれるためにというよりも、純粋に自分が強くなるために毎日練習をやりたいし、今は『こっちでやっていることが(日本代表で)どれだけできるんやろな』という楽しみしかない。
いろんな発見があって、自分ができることが増えて、ワクワクがすごく大きいので、それを大事にしたい。その感覚を日本に帰っても持ち続けたい。そういうワクワクって、代表に行くとストレスが上回って感じにくい部分があると思うんですけど、あんなにすごいメンバーとできるのに、選ばれるかどうかとか、ムダなことを考えてマイナスなほうに引っ張られるのはもったいないと思うので」

