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元巨人・木佐貫洋のいま「路線図を眺める幸せ」野球界イチの“乗り鉄”右腕はスカウト転身「単線で視察に行ったことも」鉄道もフル活用して活躍中
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佐藤春佳Haruka Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2025/07/01 11:05
現在は巨人のスカウトとして活躍する木佐貫洋さん
巨人での若手時代は、ジャイアンツ寮から東京ドームにあえて電車通勤していたこともある。オフには都電荒川線を端から端まで乗り至福の時を味わうなど、お目当ての電車に乗ることで気分転換していた。オリックス時代は関西の鉄道を網羅し、北海道では車窓から見える広大な景色を味わい、“乗り鉄”の喜びを噛み締めた。
「京セラドームはよく地下鉄で通っていましたね。札幌でも行きは地下鉄を使って最寄駅から歩いてドームに向かうことがありましたし、市電に乗るのも好きでした。一番心に残っているのは、引退した時にテレビ番組で鉄道のロケをさせてもらって、廃線になる直前の江差線に乗ったことです。北海道は車窓から見える景色も広大で本当に楽しかったです」
監督も驚いた「単線に乗って選手を視察」
東海4県を主に担当している現在のスカウトの仕事でも、鉄道をうまく活用して視察に飛び回っているという。
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「この間は岐阜の大垣から単線の鉄道(樽見鉄道)で視察に行ったら、監督さんに『その電車で来たのか! ちゃんと時刻表見ておかないと帰れなくなるぞ』と驚かれたことがありました。趣味というとあれですが、鉄道も活用しながらしっかりと足を使って色々な選手を見たいと思っています」
山あり谷ありだった13年間のプロ野球生活を駆け抜け、ユニフォームを脱いでからの第二の人生は10年目になる。
「選手を見極める目というのは本当に難しい。スカウトの先輩方を見ながらなんとか近づきたいという思いでやっています。プロ野球の世界は華やかで光の当たる部分だけではない。だからこそ担当スカウトとしては、順調な時だけでなく、迷った時、挫折した時にこそ背中を押してあげられる存在になりたいと思っているんです」
そう口にし、スーツ姿の背筋をすっと伸ばした。変わらぬ誠実さで進むその道には、レールも終点もない。
〈全4回/1〜3回も公開中です〉



