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元巨人・木佐貫洋のいま「路線図を眺める幸せ」野球界イチの“乗り鉄”右腕はスカウト転身「単線で視察に行ったことも」鉄道もフル活用して活躍中
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佐藤春佳Haruka Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2025/07/01 11:05
現在は巨人のスカウトとして活躍する木佐貫洋さん
「とにかくここに連絡してみなさい、と言われて、相手が誰かもわからず電話をかけました。『もしもし、堤です』って電話に出たのは巨人の堤辰佳GM(当時)で、びっくりしている暇もなく『職員として戻ってこないか』と誘っていただいたんです」
律儀で実直な人柄を見込んで、両球団の首脳陣はその先の道も配慮していた。しかし、巨人のオファーを日本ハムの幹部が伝えるわけにもいかない。渡された謎のメモは、そんな“親心”の表れだったのだ。
スカウトとして「注目しているのは…」
木佐貫さんは引退翌年の2016年にスカウトとして巨人に復帰。2019年、2020年と二軍投手コーチを経験したのち、2021年から現在までアマチュアスカウトとして活躍中だ。担当した船迫大雅投手は昨シーズン中継ぎとして22ホールドを挙げてセ・リーグ優勝に貢献し、新人王を獲得。アマチュア選手の若い才能をしっかりと見定めながら、自身が担当し入団した選手たちのその後にも気を揉む忙しい日々を送る。
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3球団を渡り歩き、プロ野球の光と影を味わった木佐貫さんはスカウトとして、選手のどんなところに注目しているのだろうか。
「結果が出た時の体の使い方やメカニック的部分も気をつけて見ていますが、バッターなら打てない時、ピッチャーなら抑えられなかった時にどんな振る舞いをしているのか、ということも気になります。
プロの世界で活躍できる選手は、ただ真面目なだけではなく、鼻っ柱の強さや、少しやんちゃな部分も持っているくらいでいいと思う。だから失敗した時に悔しがっていたり必死に取り戻そうとする姿を見るといいな、と思いますし、不貞腐れるのではなく、ベンチで声を出したり他の選手に声をかけたりという献身的な姿も大事だと思います」
“乗り鉄”の趣味も生かして…
選手獲得のため全国を駆け回り、まさに「足で稼ぐ」と言われるスカウトの仕事で、もう一つ武器になっているのが、木佐貫さんの趣味だ。現役時代から自他ともに認める鉄道マニア。路線図を眺めてプランを練り、実際に乗車することが好きという“乗り鉄”だ。
「大学入学を機に上京して目覚めました。元々は地理が好きで地図を見るのが趣味だったのですが、そこから路線図に派生して、電車に乗るのが趣味になりました」



