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「松井は間違いなく巨人の監督になる」野村克也が語っていた“2人の本音評”…長嶋茂雄と松井秀喜をどう見ていたか?「思わず寒気がした」 

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阿部珠樹

阿部珠樹Tamaki Abe

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posted2025/06/26 11:07

「松井は間違いなく巨人の監督になる」野村克也が語っていた“2人の本音評”…長嶋茂雄と松井秀喜をどう見ていたか?「思わず寒気がした」<Number Web> photograph by KYODO

長嶋と松井が同時に在籍した1993~2001年の9年間、巨人と野村ヤクルトは3度ずつ、セ・リーグ優勝を分け合った

 長嶋はプロに入ってから水原茂、川上哲治の両監督に仕えたが、私はそれよりも立教大学時代の砂押邦信監督の影響が強いと推測している。砂押監督は長嶋の守備を鍛えるために、自宅に呼んでマンツーマンの特訓を施したといわれるが、これは長嶋が松井秀喜を自宅に呼んで打撃指導したこととぴったり重なる。自分を一人前にしてくれた指導を、自分でも期待する選手に試してみたかったのだろう。

 長嶋は新人の松井を開幕から1カ月ほど二軍に置き、それから一軍にあげてデビューさせた。東京ドームのスワローズ戦がデビューの舞台だった。

松井秀喜18歳を見た印象

 私は松井のスイングは高卒新人のレベルではないと見ていた。近いうちに中軸に座り、手ごわい相手になるだろう。松井のほんとうの力はどれくらいなのか。それを見極めるのはスワローズにとっても大事なテーマだ。

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 私はデビュー2戦目の終盤、松井を迎えた時、マウンドの高津臣吾にすべてストレートを投げろと指示した。3点リードしていて、本塁打を打たれてもまだリードという場面である。

 私はこの年から高津を抑えに起用しようと考えていた。プロに入って身につけたシンカーがようやく使いものになるめどがついたのだ。しかし、プロに入るほどの投手は、自分の力にプライドを持っている。本格派への夢がなかなか捨てきれない。高津も力勝負へのこだわりは捨て切れていなかった。そこで松井にぶつけて、ストレート勝負を指示したのだ。おそらく松井のスイングなら高津のストレートを捉え、痛打するだろう。高卒ルーキーに痛打されれば、力勝負への妙なこだわりを捨ててくれるのではないか。

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