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「中谷潤人の強打をモロに…」西田凌佑の“敗因”は何だったのか? バッティングでも脱臼でもなく…長谷川穂積がズバリ指摘「もう少し頭を振っていれば」 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byNaoki Fukuda

posted2025/06/13 18:00

「中谷潤人の強打をモロに…」西田凌佑の“敗因”は何だったのか? バッティングでも脱臼でもなく…長谷川穂積がズバリ指摘「もう少し頭を振っていれば」<Number Web> photograph by Naoki Fukuda

西田凌佑に左ストレートをねじ込む中谷潤人

西田凌佑にズバリ指摘「もう少し頭を振っていれば…」

 いきなり猛攻を受けた西田はこれに耐え、3、4回は前に出てポイントを奪い返した。それでも長谷川さんの見立てでは、あくまで先手を取っているのは中谷であり、ポイントを奪われたからといって中谷が焦るような状況ではなかった。

 長谷川さんは西田のインファイトについて解説してくれた。

「アウトボクシングをしても良かったと思いますが、前に行くという選択も間違っていなかったと思います。ただ、一つ気になったのは頭を振らなかったこと。ガードを重視してウィービング、ダッキングがありませんでした。接近戦でスウェーも使わなかった。結果、中谷選手の強打をモロにガードで受けることになった。アッパーに対してもガードで対処していました。あれをもう少し頭を振って、アッパーをスウェーで外すなりできれば違ったのかなと。インファイトするにはちょっと中途半端な戦い方だったかなと思います」

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 中谷は力を込めたパンチをガードしているグローブや二の腕に思い切り叩きつけ、相手にダメージを与える作戦だった。であればガード主体のディフェンスは中谷にとって好都合だったということになる。

「ひょっとすると西田選手は中谷選手のパンチが思った以上に硬い、強いと感じてガードを外せなかったのかもしれません。パンチ力は思っていたほど強くないと言っていた? そうですか。だとすればなおさら頭の位置をうまくずらせば違った展開になっていたかもしれないですね」

 試合は西田が3、4回に追い上げたものの、偶然のバッティングによる右目の腫れと右肩の脱臼が災いして失速してしまう。中谷は5回、そして6回とペースアップし、6回終了時点で西田を棄権に追い込んだ。長谷川さんが注目したのは6回の中谷だった。

「5回の途中から西田選手の前の手の動きが鈍りました。手数も減った。中谷選手はそこを見逃さなかった。6回が始まるとバーンと攻勢を強めて倒しにいった。あのハートの強さ、勝負どころを見極める感覚がすごい。僕ならもうちょっと様子を見て、徐々にいくと思うんです。まだ6回ですし。あれができるのは中谷選手のすごいところです」

【次ページ】 「圧倒したい」に「勝ちたい」はかなわなかった

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