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「中谷潤人の強打をモロに…」西田凌佑の“敗因”は何だったのか? バッティングでも脱臼でもなく…長谷川穂積がズバリ指摘「もう少し頭を振っていれば」
posted2025/06/13 18:00

西田凌佑に左ストレートをねじ込む中谷潤人
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Naoki Fukuda
バンタム級2団体統一戦が6月8日、東京・有明コロシアムで行われ、WBC王者の中谷潤人(M.T)がIBF王者の西田凌佑(六島)に6回終了TKO勝ち、ベルトを統一した。中谷の予想外の猛攻、西田の果敢な追い上げ、さらには負傷、棄権と、盛りだくさんの内容は試合が終わっても議論が尽きない。WBCバンタム級王座を10度防衛した元3階級制覇王者、長谷川穂積さんはこの一戦をどう見たのだろうか。(全3回の1回目/2回目、3回目へ)
「中谷選手らしくない戦い方でした。ただ…」
「もうちょっと競るかなと思っていたんですけど」
長谷川さんの第一声はこうだった。長身サウスポー対決は、すでに3階級を制し、井上尚弥(大橋)戦にまっしぐらの中谷が有利と言われていた。その中で長谷川さんは西田の技量を高く評価し、「中谷選手はそう簡単に勝てないのではないか」と思っていたのだ。
ところが蓋を開けてみると、中谷が初回から今まで見せたことのない「つぶしにいく」ボクシングを実行。予想外の先制攻撃でペースをつかんだ。これは長谷川さんにも意外だった。
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「確かに中谷選手らしくない戦い方でした。ただ、作戦ということですから、しっかり作戦通り戦ったという点で素晴らしかったと思います。実際に西田選手にも効果的でした。
もともと長い距離で戦うことの多い西田は、同じくロングレンジも得意とする中谷を攻略するため、距離を詰める作戦を立てていた。そういった意味でいきなり距離が詰まったのは好都合だと言えたが、中谷に先手を取られた状態では苦しかった。
「西田選手は自分から仕掛けて、プレッシャーをかけて距離を詰めたかった。それがいきなり奇襲を受けて、あの距離で戦わざるを得なくなった。結果的に距離は同じでも、この違いは大きい。あの状態から懸命に前に出た西田選手はさすがでしたけど、中谷選手にしてみると『前に出てこないといけないと思って出てきてるんだろうな。がんばって前に出てきてるな』という感覚で戦っていたと思います」