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「もう少し…」長谷部誠41歳ドイツでの“7時出勤→19時退勤”コーチ生活を語る「上手くいかないことがたくさん…すごく嬉しい」なぜなのか
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byNumberWeb
posted2025/06/13 11:04
大阪・関西万博ドイツパビリオンで取材に応じた長谷部誠。コーチとしても当地で戦い続けるからこその「リアルな言葉」とは
試合前日の公式練習などは練習時間が厳格に限られており、不測の事態に備えるためにもコーチはかなり早くスタジアムに来て準備をする。
ただ、トラブルが起きなければ今度は時間が余る。そこで選手たちが姿を現す前には、名波浩コーチとともにグラウンドを走ることがよくある。長谷部の入閣以前は、名波コーチが少し孤独な感じを漂わせながらランニングしていることが多かった。全体のバランスを見て、そこに加わる辺りはボランチやリベロとして全体のバランスを整えていた長谷部らしい振る舞いだ。
また、代表の練習が休みになった日は個人的にランニングに出かける。だから体型は現役時代のままだし、代表練習では選手と一緒にボールを蹴る。まるで、次の試合に出られるのではないかという雰囲気を漂わせながら。
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ブンデスリーガが育てた偉大な監督であるシャビ・アロンソ(現レアル・マドリー)は、選手とともにグラウンドに立ち、自らボールを蹴って指導するスタイルで有名だ。長谷部の節制ぶりは、そんなスタイルをも視野に入れているのではないか――という想像力をかき立てる。
毎朝7時にクラブハウス着、PCと格闘しつつ19時まで
一方で、フランクフルトのセカンドチーム(U-21の選手を中心に構成)のコーチとしての長谷部は、一日中走り回っているような忙しい時間を過ごしている。毎朝7時にクラブハウスへ着き、帰路に着くのは19時頃。PCと格闘する時間もかなり長い。
クラブハウスに着くと、その日の選手の怪我の状態やコンディションについて、アプリを通して選手から情報を吸い上げ、フィジカルトレーナーと協議する。そのうえで、練習メニューを決めて準備をする。
練習が終わってからは、その日の練習で撮影した映像を見返して分析する。それが終わっても、今度は自チームや対戦相手の試合分析だ。長谷部がときに悩むのは、どこまで分析をするのか。直近3試合を分析した後に、「もう少し……」と感じることもある。今はコーチとして〈終わりなき旅〉を続けている。
現役時代と比べて大きく変わったのは読書量である。長谷部といえば読書家としても有名だが、そんなスケジュールだから、最近は本を読む時間はあまり取れない。
実は現日本代表監督の森保一監督も、サンフレッチェのトップチームのコーチに初めて就任したときは分析担当のコーチだった。当時、新幹線に乗って映像編集をしていて、「あと少しで終わるから」と終点到着後も作業を続けていたら、広島駅止まりの新幹線の電気が全て消されてしまい、最後は運転席から外に出してもらったという〈鉄板ネタ〉がある。長谷部は森保監督からそんな話を聞かされ、勇気づけられたりもした。
上手くいかないことが…すごく嬉しいことだな
そもそも、選手としての晩年に差し掛かっていた長谷部は悟りを開いた感じがあった。監督が代わって出場機会が思うように得られなくても、心は乱れなかった。
だが、今は違う。


