那須川天心26歳が認めた「ないと思うんですよ、パンチ力が…」世界6位に圧勝後、なぜ“ネガティブ発言”？「じつは神童じゃない」異例宣言の“真意” 

　だからといって“普通のボクサー”という型にすんなり収まろうとしている自分には抵抗感を抱く。

「本当にボクシングがうまくなったなぁと思います。でも、やっぱりなんかそういうふうにまとまった部分もあれば、自分らしさというものが消えたりもしているのかなと思う。ちょっと小さくなりすぎているんじゃないか、と」

まさかの一撃“カエルパンチ”の発想力も武器に

　天心らしさとは、誰もが驚く破天荒なパフォーマンスや言動を指す。この試合でも“らしさ”を見せたシーンがあった。

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　例えば、6ラウンドに見せたカエルパンチだ。オールドファンには輪島功一がカルメロ・ボッシ戦で見せたカエル跳び、若い世代には漫画『はじめの一歩』に登場する青木勝の必殺パンチとして知られている。

サンティリャンの顔を跳ね上げた那須川天心のカエルパンチ　©Naoki Fukuda

　単なる奇襲ではなく、しっかりとサンティリャンの顔面にヒットさせた。天心の場合、年齢的に後者へのオマージュがあったが、試合に向けて練習していたものではなかったと明かす。

「あれで倒せればトノサマガエルになれたと思うけど、倒せなかったので僕はガマガエルです（笑）。それまでは普通のボクシングをしていたからこそ、ああいうパンチも入った。皆さんからすればあれもパフォーマンスだと思っているかもしれないけど、僕にとってはそれがすごい武器になる。相手のトレーナーから『カエル跳びがあるから気をつけろ』みたいな指示は絶対ないわけですからね。ああいう攻撃をすることで、ボクシングの幅はさらに広がるのかなと思います」

　4ラウンドには相手のバッティングによって左目上をカットして流血するというアクシデントに見舞われた。キックでも流血戦は珍しくないが、試合中に天心がカットされた記憶はない。それだけ目がよく相手の攻撃を避けることができた証左だろう。

　しかし、額と額を付け合わせるような接近戦も珍しくないボクシングでバッティングは日常茶飯事。7戦目にして、天心はその洗礼を受けた格好だ。

「2箇所も切れてしまいました。今回は眉毛にラインを入れていたけど、目尻にも（予期せぬ）ラインが入ってしまった（笑）」

左目上をカットした那須川天心。試合後のコメントはこれまでのポジティブ発言とは異なっていた　©Takuya Sugiyama

　自分は神童ではないと“人間宣言”したせいなのか、SNSを見ても、応援メッセージが目立つようになってきた。作っては壊し、また作っては壊す。26歳になった天心にはロックンロールの「破壊と創造」精神がよく似合う。

　11月に開催が予定されている世界タイトルマッチで、脱・神童はもう一歩先の景色を見ることができるのか。