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「なんでもっと手を出さないんだ」中谷潤人だけが気付いていた“西田凌佑の異変”…まさかの右肩脱臼「完敗やなと。あれも中谷選手の強さ」激闘ウラ側

posted2025/06/09 19:00

 
「なんでもっと手を出さないんだ」中谷潤人だけが気付いていた“西田凌佑の異変”…まさかの右肩脱臼「完敗やなと。あれも中谷選手の強さ」激闘ウラ側<Number Web> photograph by Hiroaki Finito Yamaguchi

4ラウンド、中谷潤人の左と西田凌佑の右が交錯した瞬間。この時点で西田は右肩を痛めていた

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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Hiroaki Finito Yamaguchi

 WBC・IBFバンタム級王座統一戦が6月8日、有明コロシアムで行われ、WBC王者の中谷潤人(M.T)がIBF王者の西田凌佑(六島)に6回終了TKO勝ちした。結果は下馬評通りとなったが、スタイリッシュな中谷が見せた相手をつぶしにいくボクシングは予想外。双方の思惑が激しくぶつかり合い、大いに盛り上がったチャンピオン対決を両陣営のコメントから振り返りたい。

なぜ初回から猛攻を仕掛けたのか? 中谷潤人の戦略

 バンタム級世界戦で4連続KO勝利をマークしている中谷とディフェンスに定評がある技巧派、西田のサウスポー対決。中谷が有利と言われる中、西田の出方に注目が集まったが、ゴングと同時に「サプライズ」を起こしたのは中谷だった。

 中谷は迷わず攻めて出た。いや、ただ攻めたのではない。想像を上回る荒々しいアタックに打って出たのだ。低い姿勢から力強いジャブ、左フックを振り抜き、鋭く踏み込んで右アッパーをダブル、トリプルで突き上げる。いきなりアクション満載の攻防は観客を大いに沸かせたが、この戦術に疑問を抱いたファンも少なからずいたのではないだろうか。はたしてその攻撃で西田を崩せるのか、カウンターをもらわないのか、スタミナは持つのか……。

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 試合直後、戦術の意図を明かす中谷の言葉に淀みは一切なかった。

「1ラウンド目からダメージを与えていくというのはチームで決めていたこと。そこを実行できて、目の腫れだったり、腕だったり、つぶしていくというイメージで打っていった」

 そして笑みを浮かべながらこう続けた。

「ひとつサプライズというか、みなさんを驚かせたいというエンタテインメントな一面があった。西田選手をアッと驚かすことも大事になると思っていたので、そこはうまくはまったなと思います」

 このコメントだけ切りとると、中谷は来年5月に計画されるスーパーバンタム級4団体統一王者、井上尚弥(大橋)とのビッグマッチに向け、自らの価値を高める派手なファイトを意識したと受け取れる。しかし、本人の説明によれば、それは結果論であり、あくまで西田を攻略するための戦略が「つぶしにいく」だったのだ。

「西田選手は距離感が優れているので、そこでボクシングするよりは1ラウンド目から崩してやろう、狂わしてやろうと」

【次ページ】 「これはおいしい…まくれるぞ」西田陣営の思惑

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