那須川天心26歳が認めた「ないと思うんですよ、パンチ力が…」世界6位に圧勝後、なぜ“ネガティブ発言”？「じつは神童じゃない」異例宣言の“真意” 

自ら認めた「ないと思うんですよ、パンチ力が」

　キック時代の天心は明らかに“蹴り系の選手”で、KOもパンチより蹴りやヒザによるフィニッシュの方が多かった。そもそもが“パンチの選手”ではなかったのだ。ボクシングで闘うことになれば距離も違うので、アジャストするのに時間がかかるのは当然だろう。

　天心も、自分には突出したパンチ力がないことを吐露する。

「他のボクサーと比べてもね、パンチ力があるとは思えないですし。うん、ないと思うんですよ、パンチ力が。でも、ないからこそ試行錯誤して強くなれると思っている」

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　5月30日の公開練習では大きな成長を感じた。完全にボクサーのリズム、姿勢、タイミングで動けていたからだ。「ボクシングを2年やって、こんなに好きになるとは……」という言葉には説得力が感じられた。

公開練習での那須川天心　©Koji Fuse

　だが、この公開練習時と決戦の日の天心は重なり合わなかった。ボクシングに転向したときから世界チャンピオンになることを宿命づけられ、そのレールを敷かれた者のプレッシャーなのか。それとも、先に記したように練習と実戦のギャップに悩まされているのか。10代の頃から天心を見ている者からすれば、後者の影響の方が大きいと感じる。

「ボクシングがうまくなった」ことで失ったもの

　一夜明け会見後、天心はその理由についてこと細かに話してくれた。

「スパーリングとかでいいときには上半身と下半身の力が連動している。でも、昨日の試合ではそこがちょっとバラバラになってしまった。力んで手だけで打っているという感覚がすごくあった。スパーではそういう動きは減ってきたんですけど」

幾度となくクリーンヒットを奪うも、「手打ち」になっている感覚があったという　©Takuya Sugiyama

　さらに天心は、練習時にも最初から連動した動きができるわけではないと続けた。

「練習でも何ラウンドかシャドーやミットを繰り返したりして、やっとその動きになる。練習でも、初めからパッとできるようにならないといけない。自分の軸がまだ見つかっていないというか。いいときはいいけど、悪いときは悪いという振れ幅がまだある」

　天心はなおもボクシングの奥深さと格闘していた。そのせいなのか、こんな発言も飛び出した。

「ボクシングをやっているのに、パンチの打ち方がわからないなんて。面白いですよね」

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