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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「一般的には良くない。でも…」西田凌佑をねじ伏せた中谷潤人“常識破りのパンチ”とは?「顔が腫れるんです」元スパーリングパートナーが語る衝撃体験
text by

森合正範Masanori Moriai
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/06/12 11:30
中谷潤人と西田凌佑による壮絶な王座統一戦を、黒田雅之氏が解説する(第1回)
「ボクシングのパンチって、よく『切れのあるパンチ』って言うじゃないですか。中谷選手はパチンという切れじゃなくて、重い。打った後にさらにもう数センチ押し込むんです。サンドバッグ打ちを見ていても、そういう印象が強いですね」
――切れよりも、押し込む重いパンチ。
「一般的にはグーッと押すパンチは倒しづらいし、あまり良くないと言われています。でも、中谷選手はしっかり振り切っているんで、ちゃんと倒せるし、急所に当たらなくても、体や肩を狙えばじんじんと来る。あの打ち方は意図があったんだなと思いました」
一方、西田の闘い方は「素晴らしいと思いました」
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――元々、ああいう打ち方ではあるんですが、西田戦は、よりそうだったんですね。
「そういう感じがしました。中谷選手はナックル全体で『面』でパンチを打つんです。ナックルで丁寧に力を伝えている。打った後、対象物に当たったときの感覚をすごく大事にしている。衝撃が強くなるし、相手は重く感じます。それと反対に、ナックルの一角、『点で打つ』のは痛いパンチ。子供の頃、『肩パン』とか言って、遊び半分で肩にパンチをしたじゃないですか。ナックルの一部分、尖った一角で打ったら痛い。全面で打つと相手は重く感じる。あの感覚の違いだと思います」
――選手によって、ナックルの当て方が違うものなんですか。
「違いますね。中には、あごを打ち抜くときは一角で、そうじゃないときは面でとか使い分ける選手もいると思います。今回は西田選手のガードの隙間を狙うというより、ガードの上だろうが、ガードごと面で打って、押し込むような衝撃を与えるパンチでしたね」
――一方で、西田選手の闘い方はいかがでしたか。
「本当に素晴らしいと思いました。中谷選手がスイング気味の遠心力を使った大きいパンチだったんで、それに対しての内側からのパンチは当たっていたし、カウンター気味のコンパクトなフックや左ボディも有効に見えました。なので、話は戻ってしまうのですが、やっぱりお互いの陣営の作戦の我慢比べで、中谷選手が勝った印象が強いです」

