- #1
- #2
ボクシングPRESSBACK NUMBER
「一般的には良くない。でも…」西田凌佑をねじ伏せた中谷潤人“常識破りのパンチ”とは?「顔が腫れるんです」元スパーリングパートナーが語る衝撃体験
text by

森合正範Masanori Moriai
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/06/12 11:30
中谷潤人と西田凌佑による壮絶な王座統一戦を、黒田雅之氏が解説する(第1回)
「あれを食らったら相当効きます」
黒田は中谷と2016年から2021年まで計60~80ラウンドのスパーリングをこなした。中谷がフライ級でまだ新人王トーナメントを闘っているときから世界王座へと駆け上がるまで拳を交えた。
――実際に対峙してみて、中谷選手の特徴は。
「一般的な背の高いサウスポーの闘い方ではないですよね。対サウスポーで用意してきたことがハマらない。斜に構えて左手を隠して、右手でコントロールする。すると距離が遠いので、相手は(前へ)行きたくなる。そこに左ストレートを放つ、というセオリーはあるんですが、リズム、タイミングが独特の間というんですかね」
ADVERTISEMENT
――独特の間というのは、どのような感じなのでしょうか。
「なんて言うんでしょう。いつ来るか、ってお互いの呼吸でイメージがつくんですけど、それが結構つきづらい。体を斜にして、外からだったり、内からだったり、ひっきりなしに右ジャブが飛んでくるんで、この距離をどうしようと少しでも考えると、左ストレートが飛んで来たり。あとは左のロングフック。上へも下へもすごい遠心力を使ってくるから強い。だから、他の選手の左ボディと違って、あれを食らったら相当効きます」
――遠心力を利用しているのは見ていても分かります。
「その左のロングフックがあるから、左ストレートが生きる。左に気を取られていると、右フック、右アッパーが来る。左右どっちでも倒せる。さっき話した、押し込むようなパンチ。力の入る位置が他の選手より1センチ奥で来るような感じがします。例えば、相手のあごを打ち抜くとしたら、当たった瞬間に一番力が入れば倒れやすい。でも中谷選手のパンチはもちろん当たったときも力があるんですけど、一番力が入るのは、ちょっと奥な感じがします。貫通力があるし、結構、顔が腫れるんです。僕もそうでしたから」
黒田はスマートフォンの中から、中谷と並んだ写真を探し出した。引退後、所属の川崎新田ジム、新田渉世会長から「よく頑張ったね」と多くの世界王者とスパーリングをしたときの写真が送られてきたという。
――確かに、黒田さんの右目の下が腫れていますね。
「当たってから押し込まれるようなイメージがあって、奥に衝撃が来る。腫れやすいパンチです」

