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“9番ショート倉本寿彦”“パットン先発” 「奇策」の真実をラミレスDeNA前監督が語る「全てデータが裏付け」「もう一度やるとしてもパットンで」
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村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/06/10 11:01
監督時代には数々の「奇策」を見せたラミレス。その真意を詳細に語った
「おっしゃる通りです。倉本の守備指標が悪かったのは事実です。ただ、ゴールデングラブを取った坂本勇人の16失策に対して6失策とルーティンプレイの確実性に優れ、プラスして打者として2016年で打率は.294、左投手に強く、得点圏で3割以上を残す特性もあったんです。そのことはUZRのマイナスを差し引いても起用する価値があった。彼は2017年には9番打者としても大きな役割を果たしてくれましたしね」
エビデンスのある“奇策”
“9番ショート倉本寿彦”は、2017年5月4日からはじまったラミレスマジックの大看板ともいえる采配だ。打力のある倉本を9番に置き、1番桑原将志、2番梶谷隆幸の上位へ繋いでいくこの昭和回帰的な打順編成は、その年のベイスターズ打線の形となった。
奇策。奇術。“代打ウィーランド”、“パットン特攻”、松坂大輔に対する“横浜高校出身打線”。すべてはデータに裏打ちされた決断だったという。しかし、それらは成功すれば魔術師と讃えられるが、失敗すれば謗りを受ける切った張ったの大ばくち。ラミレスは常にその批判の中にあった気がする。
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「僕はそういう声は気にしません。信念がありましたからね。とはいえ、スタンダードとは違う、奇策を実行する時ほど裏付けになるものは必要で、カントクは当然説明責任があると考えています。僕はそのプロセスを踏んで、誰に聞かれてもエビデンスを持って説明してきました。
例えば絶対的な4番だった筒香(嘉智)の2番起用。当時の彼の得点圏打率は2割2分。一方、出塁率は4割以上でリーグ2位。ならば4番より2番に置いた方が打線はバランスが良くなります。筒香本人への打診もアナリストを交えて、『こういう数字だから、あなたのためにも、チームのためにも2番で起用した方が打線は機能すると思う』と、しっかり説明をして『はい、わかりました』と納得してもらった上で実行しています。
もちろん、あのパットンのオープナーも行き当たりばったりではない。実は登板の2週間も前から準備をさせていたんですよ」
パットン特攻——。

