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「藤井聡太17歳も…初タイトルが10人以上」棋聖戦の“意外と知らない”歴史ウラ話「フジテレビ創業者が熱烈な升田幸三ファンで」
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田丸昇Noboru Tamaru
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/31 11:00
第91期棋聖戦第4局に勝って、自身初かつ史上最年少となるタイトルを獲得し、笑顔で記者会見する藤井聡太棋聖
第1図は変化局面の部分図(便宜上、先後は逆。以下、部分図は外部サイトでご覧の方は関連記事からご覧になれます)。▲8五金と打つ王手が考えにくい手で、△8三玉▲8四金△9二玉▲8三銀△8一玉▲7二銀不成(第2図)と進んで詰みとなる。
以下は△同玉(△9二玉は▲8三金で詰み)▲7三金△8一玉▲7一角成△同玉▲6二成香△8一玉▲7二成香以下の順で玉を追って詰み。
終盤で持ち駒が金銀の場合、金を残すのが常識だ。しかし第1図で▲8五銀と打つと、第2図で▲7二金となり△9二玉で詰まない。さすがの大山と升田でも見落とすほどの盲点となった。
中原に米長、豊島に藤井…棋聖が初タイトル
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それにしても、鬼才と呼ばれた升田が記録係に詰みの有無を問うのは異例のことだ。実は、升田は米長の才能を以前から高く評価していて、師匠の佐瀬勇次七段に「自分の弟子に譲ってくれ」と掛け合ったほどだ。
棋聖戦のタイトル戦は1日制、五番勝負、持ち時間が各7時間、挑戦者はリーグ戦ではなくトーナメントで決めるなど、ほかのタイトル戦にはない新しい方式を導入した。また、年間で2期制(6月~、12月~)とサイクルが半年ごとで早いうえに、トーナメントでは勢いのある棋士が挑戦しやすい。棋聖戦で初タイトルを獲得した棋士は、中原誠十六世名人、内藤國雄九段、米長永世棋聖、現代では豊島将之九段と藤井七冠(獲得は史上最年少の17歳11カ月)など、10人以上に及ぶ。
羽生七冠の独占が崩れたのも棋聖戦だった
それぞれの世界で偉業を達成した人を「〇聖」と呼ぶことがある。和歌の柿本人麻呂は「歌聖」、水墨画の雪舟は「画聖」、俳句の松尾芭蕉は「俳聖」、剣術の宮本武蔵は「剣聖」、和算の関孝和は「算聖」など。
江戸時代後期の名棋士だった天野宗歩は、家元ではなかったので段位は七段に留まった。しかし抜群の強さから実力は十一段といわれ、後年に「幕末の棋聖」と称されるようになった。
産経新聞社が創設したタイトル戦の名称を棋聖戦に決めたのは、偉大な棋士の尊称にあやかったのだろう。そんな棋聖戦は羽生善治七冠の“独占”が崩れた瞬間など、将棋界の歴史に大きく残る出来事が数多い――。〈つづく〉


