「一番下手くそだった僕に…」名門高校サッカー部キャプテンが“亡き恩師”に誓った夢「38歳で逝去したJリーガー横山知伸」が遺した言葉 

　今シーズン、菊地はフットボール本部・強化部スカウト担当として古巣・大宮に帰ってきた。まだ桑原のプレーを見たことはないと言うが、横山さんの指導を受けた高校3年生に期待を込める。

「本人に気持ちがあるなら、サッカーを続けてほしい。ヨコだって引退してからトレーナーになれたわけですから。（プレーヤーとして上を目指すことを）可能性があるなら諦めないでほしい」

　じつはトレーナーになると誓った桑原自身も、進路について考えを巡らし始めた。

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「高校を卒業したら専門学校で理学療法士や柔道整復師などの資格を取ろうと思っていました。でも資格はいつでも取得できる。大学までサッカーを続けてもっと知見を広げる選択肢はあるし、（プレーヤーとしても）もっと上を目指せるかもしれないと思うようになりました」

　目には見えない。けれど、確かに手渡されたバトンがそこにはある。

「最終目標は日本代表のフィジカルトレーナーになること。それを目指すにあたって大事なのは、選手一人一人に情熱を持って向き合うことだと思います。まだ、17年しか生きていませんが、僕にとってヨコさんと過ごした中学生活、特に最後の1年間は人生で一番濃い時間でした。トレーナーは身体をケアするだけではなく、人の心に寄り添う存在。選手である以上何かしらの悩みがあって、心のケア、心の拠り所にならないといけない。だから情熱を持って接する。この大事な、大切なことを僕はヨコさんに教えてもらいましたから。ヨコさんは絶対に空から見ていると思う。だからサボってなんかいられない。常に本気でやっていきたい」

　未来をまっすぐ見つめる青年に、横山さんの盟友である菊地は最後にこんな想いを託した。

「将来、もしプロサッカー選手になるのなら、ヨコの背番号をつけてほしい。その姿は俺も見てみたいな。でも、自分の人生なので。桑原君らしく悔いのない時間を過ごしてもらいたい」

〈全3回／第1回から読む〉

#1から読む

38歳で逝去した“恩師”の教えを胸に「…ヨコさんは絶対に空から見てる」名門高校サッカー部のキャプテンが今も筋トレをサボらない理由

#3

「一番下手くそだった僕に…」名門高校サッカー部キャプテンが“亡き恩師”に誓った夢「38歳で逝去したJリーガー横山知伸」が遺した言葉

#2

「う、嘘だろ…もうこの世にいないの？」38歳で逝去した元Jリーガーがサッカー少年に遺した不屈の闘志「ヨコさんは分厚い本を読んでいた」

#1

38歳で逝去した“恩師”の教えを胸に「…ヨコさんは絶対に空から見てる」名門高校サッカー部のキャプテンが今も筋トレをサボらない理由