“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「う、嘘だろ…もうこの世にいないの?」38歳で逝去した元Jリーガーがサッカー少年に遺した不屈の闘志「ヨコさんは分厚い本を読んでいた」
posted2025/05/27 11:02

2023年に大宮のフィジカルコーチに就任した横山知伸さん。同年夏に脳腫瘍が再発し、2024年1月にこの世を去った
text by

安藤隆人Takahito Ando
photograph by
2024 RB OMIYA Inc.
う、嘘だろ。スマートフォンを持つ手は震えていた。
『元Jリーガー・横山知伸さんが昨夏に脳腫瘍再発。今月4日に38歳の若さで逝去』
横山さんの訃報を知らせる報道が出たのは、亡くなった2024年1月4日から1週間後のことだった。
ADVERTISEMENT
中学時代、北海道コンサドーレ札幌U-15でフィジカルコーチを務めた横山さんの指導を受けた帝京長岡高校の桑原脩斗は、胸が張り裂ける思いで記事の一字、一字を目で追った。
「現実で起こったことなんだ……と。ヨコさんが、もうこの世にいないというのが信じられなくて。涙が止まりませんでした」
盟友も言葉を失った脳腫瘍の再発
「なんでヨコばかりなんでしょうね」
横山さんとは川崎フロンターレの同期入団で、今シーズンからRB大宮アルディージャのスカウトを務める菊地光将は、当時のことをゆっくりと振り返る。
「一度、用事があってヨコに電話をしたことがあって、その時はしばらく経っても折り返しがありませんでした。いつもは必ず折り返しをくれるヨコから何もリアクションがなかったので、おかしいなと思っていたんです」
横山さんが古巣・大宮アルディージャにフィジカルコーチとして復帰した2023年のこと。当時レノファ山口の下部組織でコーチをしていた菊地は、旧知のスタッフから横山さんが同年夏に脳腫瘍を再発して入院していることを知らされた。
数日後、菊地の携帯が鳴った。着信は横山さんからだった。第一声は「電話に出られなくて、ごめんな」。横山さんらしい律儀な電話だったが、菊地は振り絞るような小さな声にことの重大さを察したという。