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中田翔でも中村剛也でも西岡剛でもなく「線の細い1番打者だった」浅村栄斗が大阪桐蔭OB初2000安打…どこでも守れてケガに強い証明は「7223打数」
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/26 17:11
平成生まれ初となる2000本安打を達成した浅村栄斗
1年目の2009年は一軍出場はない一方で、ファームでは遊撃、二塁でフル出場。打順は1番か下位で「つなぐ打者」「守備の人」の扱いだった。打率.219、31失策、粗削りな魅力はあったが、一軍のレギュラーにはまだ遠いと思われた。なおこの年、中田翔も日本ハムの二軍にいたが、イースタン・リーグ記録の30本塁打を記録、連盟から特別表彰を受けている。
浅村は2年目の2010年に一軍初出場。この年は遊撃手・中島裕之、三塁手・中村剛也の控えという位置づけながら、30試合に出場して2本塁打9打点をマークした。翌2011年は開幕戦に7番一塁でスタメン出場、この年は一塁を84試合、二塁10試合、三塁3試合、さらに外野を68試合とまさにユーティリティの働きで初めて規定打席に到達し、打率.268(15位)をマークした。
スラッガーなのに投手と捕手以外の守備経験がある汎用性
浅村がスラッガーとして頭角を現したのは2013年のことだ。チームの不動の4番で、高校の先輩でもある中村が前年オフに左膝前十字靭帯と半月板の修復手術を受けて前半戦を欠場。浅村は主として一塁を守り、110打点で打点王。ベストナイン、ゴールデングラブも獲得した。翌年以降は二塁を守り、中軸打者として2018年にも打点王を獲得し、西武時代にはベストナイン4回。浅村は「穴の少ない選手」と評せるだろう。
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右投手、左投手相手でも得手不得手を作らず、打球も広角に打つことができる。クラッチヒッターで、得点圏打率も高い。さらに20代の頃は足も速かった。若い頃は基本的に中距離打者だったが、次第に長打力もついた。そして守備でも投手と捕手以外は守ることができ、どのポジションでも守備能力は平均以上を誇るなど、極めて「汎用性の高い」選手だったといえる。
何より、頑健でほとんど故障をしなかった。チームにとってこれほど貢献度の高い選手はいない。
2回目の打点王を取った2018年オフにFA宣言をして楽天に移籍。翌年2月、沖縄県久米島での楽天春季キャンプでは、茂木栄五郎と組んでキャッチボールをしていたが、昔からいた選手のような馴染み具合だった。
浅村のケガしにくさを象徴する「打数」とは
楽天に入団して以降は2020年、23年と二度にわたって本塁打王を獲得。二塁でベストナイン4回、ゴールデングラブ1回。FA移籍では屈指の成功例と言えよう。
浅村は、西武時代の2015年8月8日、京セラドーム大阪のオリックス戦に6番二塁で出場してから、今年の5月18日、みずほPayPayドームのソフトバンク戦に6番指名打者で出場するまで、1試合も休まなかった。1346試合連続出場はNPB4位、パ・リーグ記録。
2000本安打が目前に迫った浅村は安打がピタッと止まり、絶不調に陥った。三木肇監督はプレッシャーを和らげるために、次の5月20日の西武戦で浅村をベンチに下げたとみられる。
浅村と彼以外の大阪桐蔭出身、平成生まれの選手と安打数と打数を並べてみると、以下のようになる。

