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「20点差で負けていても楽しそう…」日本初のプロ野球チーム「佐賀アジアドリームズ」はナゼ注目を集めるのか?「NPB球団スカウトが密かに視察も」 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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posted2025/05/25 17:40

「20点差で負けていても楽しそう…」日本初のプロ野球チーム「佐賀アジアドリームズ」はナゼ注目を集めるのか?「NPB球団スカウトが密かに視察も」<Number Web> photograph by Yasushi Washida

日本初のプロ野球チーム「佐賀アジアドリームズ」を率いる香月良仁監督(左)

「プロにもなれない、お金にもならない、それでも好きで野球をやっていた子たちが、プロになった。だから最初はプロっていうのはこういうものなんだよって教えることからがスタートでした」

 こう語るのはチームを率いる香月良仁監督だ。香月監督は投手としてロッテでプレーし、15年には中継ぎとして40試合に登板したバリバリのNPBプレーヤーだった。

「僕らは先輩たちが築き上げてきたプロ野球を観てきて、プロってこういうものなんだというのがあるんですけど、ここに集まった選手たちは、みんなが自分の国では自分が初めてのプロ野球選手なんです。プロフェッショナルで野球をやるということが、どういうことなのか、というのが最初はなかなか分からなかったんですね」

「20点差で負けていても、楽しそう…」

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 母国に戻れば野球は日本ほどメジャーではないし、むしろマイナースポーツだ。それでも野球の魅力に引き込まれて、プレーするのが楽しくてボールを握ってきた。だからこんな場面もあったという。

「20点差くらいで負けていても、自分がいいプレーをすると素直に楽しそうになってしまうんですね。ただ、それもとても大事だと思う。だから日本のプロとしての固定観念を押し付けても、彼らの楽しさを奪ってもダメだと思いました。でもその一方でプロ野球、勝負じゃないですか。最初はそのジレンマとの戦いでした」

 チーム発足1年目の昨年は公式戦16戦全敗。ノーヒットノーランをやられる屈辱も経験した。しかし今季は、開幕3戦目の宮崎サンシャインズ戦に8対7で劇的な逆転サヨナラ勝ちを収め、念願の公式戦初勝利を飾った。

「負けても、負けても全力で100%で向かっていったら、それを応援してもらえるようなチームになる。でもそういう努力をするのは経営陣の仕事です。現場は負けていいというのは1ミリも感じさせないように。そこは意識していますね」

他の独立リーグのチームより「給料は高い」

 プロ野球選手になるということはどういうことなのか。集まった選手たちにとって、その最大の実感の1つは野球をすることでお金を稼げるということにある。

 実は選手たちは興行ビザを取得して、プレーをすることに対して、その対価としてチームから給料が支給されている。独立リーグの選手たちといえば、給料も安く、チーム活動以外の時間に地元でアルバイトをして収入の補填をするのが見慣れた光景だ。しかし興行ビザで入国しているため、アジアドリームズの選手たちは余った時間にアルバイトでお金を稼ぐことはできない。

【次ページ】 NPB球団のスカウトが視察する選手も

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#佐賀アジアドリームズ
#香月良仁

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