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「おまえにはロマンはいらない」西武・山田陽翔“甲子園のアイドル”を脱ぎ捨ててリリーフで開花…21歳の成長を支えたコーチの“ある言葉”
text by

市川忍Shinobu Ichikawa
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2025/05/22 17:00
5月17日オリックス戦で初勝利を挙げた山田陽翔は話題の「クソデカネックレス」を首からかけて笑顔を見せる
140km台のストレートは、本格派投手の多いライオンズの中継ぎの中ではパッと目を引くボールではない。しかしカットボールやシュートなど多くの球種を駆使し、バットの芯を外して淡々とアウトを積み重ねていく。
中継ぎで発揮する「存在感」
一軍昇格当初はリードされている場面での登板だったが、0封を続けるうちに同点の場面へ。そしてチームがリードしている試合での登板へと、自身の持ち味を十分に生かして存在感を示してきた。
12登板連続無失点という見事な『結果』で答え、初勝利を手にしたのである。
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山田は振り返る。
「昨シーズンの途中、先発から中継ぎに変わったのが大きかったと思います。ちょうどフォームをいろいろ試行錯誤していて、三軍で練習していたときでした。西口文也二軍監督(当時)から『中継ぎとして二軍に上げるから準備しておきなさい』と言われまして。最初はびっくりしたんですけど、とにかく頑張るしかないと思いました」
同僚である森脇亮介投手を参考に、右足を“すり足”にするピッチングフォームに改造し、試しているときだった。同様に、シュートボールの習得にも取り組んだ。
シュートが大きな武器に
「去年、二軍の投手コーチだった長田(秀一郎)さんが練習の合間によくキャッチボールをしてくれたんですが、長田さんは返球してくるときにシュートを含めた変化球を遊びっぽく投げてくるんですよ。それで『シュートっていいなぁ』と。長田さんは現役時代にシュートを投げていたので、どうやって投げているのか聞いたりして……」
練習を始めるとすぐにコツをつかみ、ゾーンに投げられるようになっていった。当時、その様子を見ていた大石達也投手コーチ(元・ファーム投手コーチ)は振り返る。
「昨年の初夏ぐらいですか、山田はストレートで全然ストライクが取れなくなってしまい苦しいピッチングを続けていました。ストレートをしっかりと打者に印象付けないと、カットボールや変化球は生きません。ただ、シュートを投げ始めたところ、むしろシュートの方がコントロールが良くて、シュートはある程度ストライクゾーンに行く。そのおかげで打者を抑えることができるようになったのだと思います」


