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「ホームランバッターに見られがちですけど…」“2mの長身”秋広優人が語った“意外な持ち味” 電撃トレード・巨人→ソフトバンクで追い求める“打率”
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鷲田康Yasushi Washida
photograph bySNAKEI SHIMUBUN
posted2025/05/18 17:00
巨人からソフトバンクにトレード移籍した秋広優人。新天地で初安打を放った
遠くに飛ばせる天性の資質がなければ、ホームランバッターになることもできないし、育てることもできない。その天性の素質を秘める秋広に、監督が長距離打者になることを求めたのは仕方ないことだ。ましてや巨人はメジャー移籍を視野に入れている岡本和真内野手の後継育成が急務だった。
その期待を込めて1年目のオフには、レジェンド・松井秀喜さんが背負っていた「背番号55」を与えられた。そうしてチームの主砲となるべく期待を一身に背負い続けたのが、秋広の巨人での4年間余だったのである。
もちろん秋広もその期待に応えようと必死のプレーを続けてきたのはいうまでもない。
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入団3年目の2023年には開幕直後に一軍昇格すると4月22日のヤクルト戦で先発して第1打席でプロ初安打をマーク。それから7日後、29日の広島戦ではプロ初本塁打も放った。その後も順調に結果を残し、5月25日には松井さん以来となる20歳以下でのクリーンアップとなる「3番」で先発起用され、7月23日には2桁到達の10号も放った。
ただ、そこがある意味、首脳陣の期待する秋広の巨人での頂点だったのかもしれない。
このシーズンも夏場以降は数字が急降下していき、特に対サウスポーで結果が残せずスタメン落ちするようになっていく。
121試合の出場で打率2割7分3厘の41打点、本塁打は結局10本止まりという最終成績だった。
「もっともっと成長できる。その余白を残して終わらせたということ」
このシーズン限りで退くこととなった原監督は、規定打席に4打席足りないままに終わった秋広に、こんな言葉を残してチームを去っていった。
24年シーズンからは二軍時代から秋広を知る阿部監督が就任。
「フルスイングをすることを1番にやりたい」
秋広もこんな意気込みでシーズンのスタートを切ったが、意気込みとは裏腹に結果が伴わない日々が続いていった。
「あんなバッティング……全く何の魅力も感じなかった」
9月16日の中日戦。先発起用されながら2打席凡退した秋広に、試合後の阿部監督がこう厳しいコメントを発したことを覚えているファンも多いと思う。フルスイングしないで当てにいったような打撃をしている。それでは長打は出ない。それじゃあオマエがなるべきホームランバッターにはなれないよ。期待が大きいから、その期待と裏腹の姿に指揮官のコメントは常に厳しかった。
駒田徳広のアドバイス「3割、20本の景色を見たら…」
ただ秋広本人の中では、どこかこれが自分本来の姿ではないという違和感が澱のように溜まっていっていたのかもしれない。


