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「僕を嫌いな人はいるだろうな…」桜庭大世がRIZIN一本負け直後に明かした“アンチへの本音”…勝者・中村大介の証言「彼はまだ始まってもいない」
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2025/05/14 17:01
RIZIN2戦目となった桜庭大世は、腕ひしぎ十字固めで中村大介に敗れた
勝った中村は「彼はまだ始まってもいない」
RIZINに出場できるのは親の七光りがあるから。彼は当然のようにそう考えている。初黒星についても「いつか絶対にくるもの」と捉えていた。綺麗な戦績、ファイトレコードの黒星欄が「0」であることが大事なわけではないと桜庭。むしろ、負けから這い上がることで感情移入してもらえればいいと言う。
残念だったのは、グラウンドの攻防が期待していたほど見られなかったことだ。田村も中村も桜庭和志も、グラウンドで動きまくり、攻めまくるスタイルが特徴だ。攻防が目まぐるしく入れ替わる展開から、田村の寝技は“回転体”とも言われる。中村はその動きを受け継ぐ選手だ。
中村と桜庭大世の“回転体”も見たかったところだが、中村は連敗脱出のため、ポジションを固めてじっくり攻めていった。それもあって、中村は桜庭の寝技を「未知数」だと評している。
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「彼はまだまだこれから、まだ始まってもいないと思うので。こんなおじさんにやられて悔しいと思うので、ここから強くなってほしいです」
技術の中に宿る“歴史”と“遺伝子”
試合中、桜庭がスタンドでバックにつくと、中村がアームロックを狙う場面もあった。これは桜庭和志が得意とする動きだ。
中村も桜庭も、桜庭和志がプロデュースするグラップリングイベント『QUINTET』に参戦している。だがこれまでスパーリングで手を合わせたこともなかったそうだ。それでも、どこか通じ合うものを感じたと桜庭。
「大介さんはちゃんと僕が嫌なことをやってくる気がして。“先輩だな”って。寝技はやったことがある動き、慣れている動きという感じがしました」
やはりルーツは同じなのだ。もちろん、桜庭大世は現在を生きて未来を作る。意識して歴史を背負う必要はないだろう。自然にそうなってしまう、という話だ。父との練習で培った技術の中にも“歴史”あるいは“遺伝子”がある。桜庭大世という選手がRIZINで闘う、そのこと自体に大きな意味があるのだ。
今回の試合は2025年5月4日。父・桜庭和志がホイス・グレイシーを計90分の死闘の末に下したのは、2000年の5月1日である。25年前の同じ月のことであり、場所も同じ東京ドームだった。筆者はそのどちらにも取材者として立ち会えた。幸運だったと言うしかない。


