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「僕を嫌いな人はいるだろうな…」桜庭大世がRIZIN一本負け直後に明かした“アンチへの本音”…勝者・中村大介の証言「彼はまだ始まってもいない」
posted2025/05/14 17:01

RIZIN2戦目となった桜庭大世は、腕ひしぎ十字固めで中村大介に敗れた
text by

橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
『RIZIN男祭り』(5月4日、東京ドーム)を取材していて感じたのは、日本における格闘技ファンが完全に代替わりを果たしたということだ。
圧倒的一番人気は朝倉未来。その対戦相手である鈴木千裕と、朝倉のジムであるJAPAN TOP TEAM(JTT)の選手たちが続く。朝倉やJTTのヒロヤが勝利した瞬間の大歓声は、球場ブルペンに設えられたプレスルームにもダイレクトに届いてくるほどだった。
一方で、中村大介vs.桜庭大世はドーム前の広場で開催されたファン公開形式のカード発表記者会見でも、あれっと思うくらい反応が薄かった。中村は3年ぶりのRIZIN参戦かつ6連敗中、桜庭はレジェンド・桜庭和志の息子という話題性があるものの、まだプロMMA2戦目だから仕方ないのかもしれない。
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中村の師匠である田村潔司と、桜庭和志はともにプロレス団体UWFインターナショナル(Uインター)所属だった。先輩・後輩でありライバル関係だ。
大ブームを巻き起こしたUWFがあり、そこから分派したUインターがあり、Uインターのエースだった髙田延彦がヒクソン・グレイシーと闘うところからPRIDEが始まった。そしてPRIDEに大ブームをもたらしたのが“グレイシーハンター”桜庭和志であり、RIZINはPRIDEの後継プロモーションということになる。
44歳の中村は会見でも、対戦の背景にある“U”について語った。「僕はUインターを見て人生が決まった」と中村。しかし若いファンの多くにとって、Uインターの全盛期(1990年代前半)は生まれる前の話だろう。1972年生まれの筆者には“中村vs.桜庭ジュニア”はたまらない顔合わせなのだが。桜庭大世にしても1998年生まれで、“U”のことはよく知らないのだと言った。
『RIZIN男祭り』に隠された“裏テーマ”
大会名の『男祭り』はPRIDEの年末イベントへのオマージュ。大会オープニングでは縁の(元)選手たちによる太鼓のパフォーマンスが行われた。これもPRIDE男祭りからの“伝統”だ。太鼓のリズムはPRIDEのオープニングテーマと同じ。CEOである榊原信行はリング上で「己のPRIDE、見せつけろ!」と叫ぶ。これが開会宣言となった。
こうした演出も、今のファンにはピンとこないものだったかもしれない。女子MMAが確立している時代に『男祭り』というネーミングはアナクロな感じもする。ただ榊原にとっては、今だからこそという思いもあった。RIZINは今年旗揚げ10年目、榊原はプロモーターとして、PRIDE時代から数えて10回目の東京ドーム大会。その“歴史”が『RIZIN男祭り』の裏テーマ、隠し味だったのだ。