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朝倉未来が“両者流血のTKO勝利”で見せた必死さ…『RIZIN男祭り』鈴木千裕戦直後の「全然楽しくないですよ」発言、3連敗からの復活劇はなぜ生まれたか?
posted2025/05/05 17:06
5月4日のRIZIN男祭りで対戦した朝倉未来と鈴木千裕
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
「本日のチケットは当日券も含め完売いたしました」
試合(本戦)開始を前に、プレスルームの記者たちに広報担当者が告げた。5月4日の『RIZIN男祭り』。会場の東京ドームを満員(観衆4万2706人)にした最大の原動力は、セミファイナルの朝倉未来vs.鈴木千裕だった。
昨年7月、平本蓮に敗れ戦前の予告通り引退を表明した朝倉。だがRIZINブレイク最大の功労者が放っておかれるはずはなかった。運営がオファーしたのは平本とのリマッチ。朝倉も復帰を決意し、ドームで“世紀の再戦”が行われることになった。興行タイトルは那須川天心vs.武尊が実現した大会にちなんで『THE MATCH 2』。
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開催は大晦日に発表されたが、2月になってアクシデントが発生する。平本の負傷欠場だ。そこからは代替選手探し。平本と朝倉のリマッチでなければ『THE MATCH』とは呼べないから、大会名も変わった。往年のPRIDE大晦日イベントから取って『RIZIN男祭り』。紆余曲折の末、朝倉の相手は前フェザー級王者の鈴木千裕に決まった。
朝倉、鈴木にとって“リスキーなカード”
アイドルやアーティストが何日も連続でドームライブを行う中、単日開催の格闘技やプロレスがドームを使用するハードルは以前より上がっているという。平本vs.朝倉が流れたからといって、会場をキャンセル(しかもゴールデンウィークの日曜日に)したら次にいつ借りられるか分からない。とはいえドーム大会を成功させるには、生半可な選手では朝倉の相手など務まらない。
そこで名乗りをあげたのが鈴木だった。大晦日、クレベル・コイケに敗れてベルトを失い、3月30日の再起戦もカルシャガ・ダウトベックに判定負け。そのダメージから約1カ月後の朝倉戦は無理だと誰もが思ったが、4月9日のカード発表会見に登場する。
「充電しようと思ったんですけど(ケガが)治っちゃうんですよね俺って」
トップファイター同士の初対決。朝倉は「RIZINのピンチに鈴木選手が男気を見せてくれた。男祭りというより男気祭りですね」と鈴木を称えた。
もちろん朝倉にとってもリスキーなカードだ。鈴木の持ち味は暴風雨のような打撃ラッシュ。朝倉はキックボクシングの試合を合わせて3連敗中であり、2試合連続でKO負けしている。今の朝倉では鈴木の連打に呑み込まれてしまうのではないか。そんな下馬評にも説得力を感じざるをえなかった。


