朝倉未来の復活「観客動員は井上尚弥vs.ネリに匹敵」なぜファンは熱狂したのか？ RIZIN新王者は酷評「つまらない試合」評価が分かれる“本当の理由” 

　シェイドゥラエフのシビアな感想と、冒頭で記した秋元の「かっけぇ」。そのギャップを、筆者はいまだ埋めることができない。

“言い訳なし”鈴木千裕が見せた男気

　もうひとつ気になった点がある。試合後、記者から朝倉の印象について聞かれた鈴木が「今回は自分との闘いだったので、そんなに覚えていない」といった回答を繰り返し、試合について具体的なことをほとんど口にしなかったことだ。

　その一方で、自らを奮い立たせる言葉には力が込められていた。王座返り咲きへの道のりについて問われると、「俺はまだ25歳。まだまだ強くなれるし、もっともっと高みを目指せる。俺の心が折れてない限り、真の負けじゃないんで」と前向きな言葉を並べた。

試合後の鈴木千裕。左目上の傷跡が痛々しい　©Koji Fuse

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　何か釈然としないものを感じた。2ラウンド終了後のコーナーで、鈴木がいつもは見せない苦しそうな表情を浮かべていたことも気になった。試合前には「千裕はダウトベック戦で負ったケガが治っていない」という噂も流れていた。それを裏付けるかのように、全試合終了後の総括でRIZINの榊原信行CEOは「『ここは休めよ』という余裕が僕にはなく、鈴木千裕の男気に甘えてしまった」とケガを押しての強行試合だったことを示唆した。

　複数の関係者の証言を突き合わせると、今回の一戦が決まる前から鈴木が複数箇所にケガを抱えていたことは確かなようだ。では、それが明らかになったことで朝倉の勝利の価値が揺らぐのかといえばそうではない。どんな状況だろうと、格闘技はリングで起こったことが全てなのだから。

　いみじくも試合後、鈴木は次のような発言をしている。

「みんな100％に限りなく持っていっているけど、それぞれいろいろ背負ってやっているので。だからそれ（コンディション）を含めての勝負なんじゃないですか。土俵に上がった時点で言い訳はないですよ」

　東京ドームで交錯した、ふたつの男気。真相を知れば知るほど、しがないスポーツライターも「かっけぇ」と呟いてしまいそうだ。