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朝倉未来の復活「観客動員は井上尚弥vs.ネリに匹敵」なぜファンは熱狂したのか? RIZIN新王者は酷評「つまらない試合」評価が分かれる“本当の理由”
posted2025/05/09 17:40

引退を撤回し、鈴木千裕を相手に復活勝利を飾った朝倉未来。東京ドームに集った4万人超のファンを熱狂させた
text by

布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
「ヤベェ、かっけぇ」
朝倉未来が鈴木千裕を3ラウンドTKOで下した直後、同門の秋元強真は呟いた。その口調から、朝倉を本当に強くリスペクトしていることがわかった。
観客動員は「井上尚弥vs.ネリ」に匹敵
5月4日、東京ドームで開催された『RIZIN男祭り』。アリーナ席の観客は勝ち名乗りを上げる朝倉を映像に収めようと、一斉にリング上にスマホを向けていた。いまの世の中、選手に向けられるスマホが放つ蛍のようなおぼろげな光が人気のバロメーターになる。
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入場時の声援を比較しても、この日の一番人気は明らかに朝倉だった。現在、朝倉はMMAで連敗中の身。今回の勝利は2023年4月29日の牛久絢太郎戦以来、実に2年ぶりの勝利だった。一方の鈴木も同じく連敗中で、3月30日の『RIZIN.50』でカルシャガ・ダウトベックに1-2のスプリット判定で負けた直後の緊急参戦だった。
それでも事実上のメインイベント(試合順はセミファイナル)として注目を集めるところに、朝倉人気の根強さを感じずにはいられなかった。負けが続いていただけに、巷からは「さすがにカリスマにも陰りが見えるのでは?」という声も聞こえてきたが、全ては杞憂に終わった。
何よりも驚いたのは当日の観客動員だ。平本蓮vs.朝倉未来のリマッチという切り札を平本のケガによる欠場で失い、代替カードとして組まれたのが朝倉vs.鈴木だった。
チケットの売れ行きは当初、芳しくなかったと聞く。しかし、いざフタをあけてみれば当日発売したチケットは完売で、国内屈指の“大箱”である東京ドームは4万2706人(主催者発表)の大観衆で埋まっていた。外野席こそ解放していなかったが、アリーナ席も含め一塁側、三塁側の席ともにギッシリと入っていた。
さすがに那須川天心vs.武尊を組んだ『THE MATCH 2022』の5万6399人を超えることはできなかったが、昨年5月6日、34年ぶりの東京ドームでのボクシング興行として話題を呼んだ井上尚弥vs.ルイス・ネリの4万3000人に匹敵する動員ではないか。
ファンのたしかな熱気も感じられたので、「大半は招待客」といった力ずくの観客動員でもなかっただろう。招待客が多いと、興奮と熱狂の渦は生まれない。その証拠に、第1ラウンド開始直前から何度となく発生した未来コールと千裕コールのぶつかり合いはあまりにも音量が大きすぎ、いずれも個人名として判別することができなかった。