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「高橋藍もダマされた…」味方も惑わすセッター大宅真樹(30歳)の“絶品トス”「マジで怖い」から始まったSVリーグ初代王者への道のり 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byYuki Suenaga

posted2025/05/09 11:07

「高橋藍もダマされた…」味方も惑わすセッター大宅真樹(30歳)の“絶品トス”「マジで怖い」から始まったSVリーグ初代王者への道のり<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

高橋藍ら豪華なアタッカー陣を操り、サントリーサンバーズ大阪をSVリーグ初代王者に導いたセッター大宅真樹(右)

 今季サントリーに加入した高橋藍も「大宅選手は、“あえて”上げるセッター」だと話す。

「普通だったらディマに上げるだろうな、という状況でも、自分やAJ(デ・アルマス アライン)、もちろんクイックにも上げたり。すごく考えて相手の裏を突く選手だと思います」

 ファイナルでもそんな場面があった。例えば、試合時間3時間25分の大激戦となった第1戦の第4セットのデュースの場面。愛知のオポジット宮浦健人にノータッチエースを決められ、29-30とマッチポイントを握られた。相手が勢いづき、あとがなくなったこの場面で、大宅は、少し前にブロックされていたミドルブロッカー佐藤謙次のCクイックを使ってサイドアウトを奪った。

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「謙次は本当に毎回全力で入ってくれるから。1本前に止められても、次も同じタイミングでしっかり入ってくれるので、僕は全然気にしない。それに、1本止められたら、相手ブロックのマークが薄くなると思うので。(小野寺)太志に対しては、たぶん1本止めても相手はマークを外せない。でもその対角のミドルに対しては、次はサイドだろうと考えると思うので、それを利用して。マッチポイントだったとしても使う自信はありました」

 崖っぷちでも、スパイカーに対する信頼と冷静さは揺らがなかった。

「ムセルスキー頼み」からの脱却

 西田は「真樹さんの強みはクイック、パイプ」だと言う。特に今季は大宅が「今はパイプが軸」と語っていたように、パイプ攻撃(センターエリアからのバックアタック)が生命線だった。

 昨季までは身長218cmのオポジット、ムセルスキーにどうしても打数が偏った。「ムセルスキー頼み」という声も聞こえてきて、大宅は「めちゃくちゃ気にしていた」と言う。

「でもそう言われてもおかしくないぐらい自分も頼るところが多かったし、昨季までのチームは、みんながディマのためにつなぐという意識が大きかった。アウトサイドの(藤中)謙也さんも守備に徹してくれていて、だからチームとしてバランスよく、すごくうまく回っていた。でも今季はそこに頼りすぎずとも、決め切ってくれるスパイカーが他にもいる。今季はまた違うバランスでやれているのかなと」

 今季はアウトサイドに、攻守ともに世界で実績を残してきた高橋藍、ポーランド代表のアレクサンデル・シリフカが加入。特にパイプ攻撃を得意とする高橋藍が先発に定着したことで、センター(クイック、パイプ)、ライト、レフトの打数がバランスよく3分割される試合が増えた。

「今季は『どうやったらディマをノーマークで打たせられるかな?』というのを楽しんでやれた日もあるし、あ、ノーマークになったという瞬間が、結構シーズン後半は多い」と大宅は語っていた。

 クイックを絡めたパイプ攻撃の使い方が絶妙で、フォームにも癖がないと西田は言う。

【次ページ】 味方もだまされたパイプ攻撃

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