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「高橋藍もダマされた…」味方も惑わすセッター大宅真樹(30歳)の“絶品トス”「マジで怖い」から始まったSVリーグ初代王者への道のり
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米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byYuki Suenaga
posted2025/05/09 11:07
高橋藍ら豪華なアタッカー陣を操り、サントリーサンバーズ大阪をSVリーグ初代王者に導いたセッター大宅真樹(右)
「真樹さんのパイプの上げ方は見ていてわからない。普通は少しコートの中を向いてしまいがちなんですけど、真樹さんはレフトに上げる体勢で、ナチュラルにパイプにも上げられるんです」
時には味方もダマされる。高橋藍は2月の愛知戦でパイプ攻撃の際にアタックラインを踏んでしまい、「しまった」という表情を浮かべた。試合後、こう反省していた。
「大宅選手に、自分もダマされているというか(苦笑)。もちろん(トスが)来るつもりで毎回(助走に)入らないといけないんですけど、『あ、クイックかな』と思いながら入ってしまうと、少しステップが多くなって、ラインを踏んでしまう。自分がちょっとサボってしまっていた。クイックに(相手を)引っ掛けて、ノーマークの状況を作ってくれたのに」
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相手ブロックをノーマークや1枚にする場面が多く、レギュラーシーズンのパイプ攻撃の決定率は高かった。特にコミュニケーションを重ねてコンビの息が合った後半戦は、高橋藍のパイプ決定率が80%を超える試合も珍しくなかった。
脅威だった高橋健太郎のブロック
だがチャンピオンシップ(プレーオフ)に入ると、相手に徹底的に分析された。愛知とのファイナル第1戦は2セットダウンから逆転勝利を収めたものの、大宅はこう語っていた。
「今日はパイプに関してはすべて相手ブロックにバレていて、2枚か3枚つくシーンが多かったので、そこは考えないと」
特に脅威だったのが愛知のミドルブロッカー高橋健太郎のブロックだ。
「健太郎さんは真ん中にステイして、本当にリードブロックのお手本のようなブロックをしてくるので、ゲームを潰されかける」
第2戦の立ち上がり、大宅は1本目にアラインのパイプ攻撃にトスを上げ、高橋健のブロックに見事にシャットアウトされた。
いきなり生命線を止められ、どう切り替えたのか。試合後そう尋ねると、こう明かされて驚いた。
「1本目のパイプは、まず第1戦と同じ(ブロックの)付き方かな?と確認するためにあえて上げました。しょっぱなに確認したかったので。それで第1戦と同じだとわかったので、そこからはもうサイドサイドに速く持っていって、相手の意識をサイドに移そうとシフトできた。1点目から切り替えることができたのでよかったかなと思います」
優勝がかかった舞台でのこの冷静さと大胆さ。5季連続ファイナル進出はだてじゃない。
そうして真ん中へのマークが薄くなってきたタイミングでクイック、パイプを織り交ぜていく。第3セットは高橋藍のパイプ攻撃でマッチポイントを握り、最後はリベロの喜入祥充がつないだトスをムセルスキーが決め、SVリーグ初代チャンピオンの称号を勝ち取った。
「嬉しいというより、ホッとしたというのが一番大きいです。やっぱりスパイカーが揃っている分、めちゃくちゃ責任感やプレッシャーが大きかったので」
大宅は脱力した笑顔で言った。


