獅子の遺伝子BACK NUMBER
「チャンスでは自分に回ってこいと…」西武・渡部聖弥が明かした打撃論が凄い「華はないかもしれないが」熟練コーチも唸らせた実力派ルーキーの素顔
text by

市川忍Shinobu Ichikawa
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2025/05/04 11:02
ライオンズ巻き返しの原動力となっているルーキーの渡部
仁志コーチは渡部の長所についてこう語る。
「パッと見たときに華があって、ひと際目立つ選手というわけではないかもしれません。練習している姿を見て、すごく見栄えがいい選手は大勢いますが、聖弥の場合はゲームでこそ彼の良さが出る。形が悪かろうが何だろうが、うまくボールをコンタクトできる能力が高い選手だと思いますね」
まさに実戦を重ねてより輝くタイプの選手だといえよう。
「自分の打席が回ってきて欲しいと…」
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4月12日の日本ハム戦で右足首を捻挫し、しばらく実戦を離れた。二軍での調整を経て、同25日のオリックス戦から一軍に昇格した。渡部は言う。
「やはり一軍でプレーすることで自分はモチベーションをより高く持てるとわかりました。試合に出たら、そこには“自分がヒーローになるチャンス”がある。チームの勝利に貢献して『渡部のおかげで勝てた』と言われたいです。お立ち台やヒーローインタビューで、テンション高く何か言葉を発するのは性格的には苦手かもしれませんが(苦笑)。ただ、やはりチームのためになりたいので、サヨナラのチャンスなどは自分に打席が回ってきてほしいと心から思っています」
その言葉通り、4月29日にはプロ入り後、初めてのお立ち台も経験した。この日の勝利でライオンズは3連勝を飾り、借金をすべて返済した。
「プロに入ってからは、まだ下っ端というか、ルーキーですから、厳しいマークはされていません。周りにいいバッターが大勢いるので、それほど手の込んだ配球もされていないと思います。でも、これから数字を残していく上で、きっとマークも厳しくなります。もっともっと考えることが大事になります。考え過ぎは良くないので難しいのですが、でも考えながらプレーしていきたいですね」
自分が警戒される覚悟はすでにできている。肝の据わったルーキーの今後にこれからも注目したい。


