マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER

「内角は危ない、長打につながる…あれ、ウソやろ」300勝投手が90歳で没…元阪神“投げる精密機械”小山正明がベテラン記者に明かした「金言」の中身 

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

PROFILE

photograph byJIJI PRESS

posted2025/05/03 11:07

「内角は危ない、長打につながる…あれ、ウソやろ」300勝投手が90歳で没…元阪神“投げる精密機械”小山正明がベテラン記者に明かした「金言」の中身<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2017年の始球式では張本勲(左)と対決した300勝投手の「投げる精密機械」小山正明氏。4月に亡くなった大エースがベテラン記者に残した金言とは?

「それや! キャッチャー、配球のプラン崩れて、いちばん困るやろ、ストライクやったとしても。キャッチャーは、このバッターをどんなボールで打ち取ってやろうって勝負球をまず決めて、そこから逆算的にストーリー作るわけや。それを、いきなり初球から反対に来られたら、配球ぐちゃぐちゃや」

 打てない打者に珍しく「パカーン!」とやられ、ダグアウトに帰って来て、「なにしとんのや!」と監督に一喝された捕手が、「最初から逆球じゃあ、配球もへったくれもないわい!」と血相変えてやり返したことがあったそうだ。

「それぐらい、キャッチャーは懸命に知恵絞って、配球に心を砕いてるんや。キャッチャーかて人間やで。ピッチャーの技量不足で自分が叱責されたら、なかなか本気になってくれへん。行き当たりばったりのリードになって、バッテリーの心が離れてしまったら、勝てるわけないやろ」

キャッチャーに「依存」のピッチャーは半人前

ADVERTISEMENT

 理想のバッテリーのあり方は……?

「今日のこのバッターのスイングやったら、『スライダーから入っていったらいかがでしょう?』。キャッチャーがピッチャーに、まずおうかがいを立てる気持ちでサインを出す。それを見て、ピッチャーが『おお、オレも今日のこいつを見て、まずスライダーで空振りとったろと思っとった。ヨッシャ、いくで!』。これや。

 バッテリーの両方に、バッターに対する観察と読みがあって、それが合致した時に、<確信>という強い力が湧いて、全力で腕が振れるんや。『次、なんですか? スライダー? ああ、そうですか』みたいなサインの見方をしていて、いざ投げる段になって、ほんまもんの力が入るかい! キャッチャーに依存して投げているうちは、ピッチャーも半人前なんや」

【次ページ】 現代でも通用する「論」の重要性

BACK 1 2 3 4 NEXT
#小山正明
#阪神タイガース
#ロッテオリオンズ
#大洋ホエールズ
#村山実
#山本哲也
#渡辺省三

プロ野球の前後の記事

ページトップ