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“青マルケス”ことアレックスが苦節94戦目の初勝利! ヤマハのクアルタラロも560日ぶり表彰台で「ドゥカティ1強」に変化の兆し
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遠藤智Satoshi Endo
photograph byGetty Images
posted2025/04/30 17:06
スペインGPでMotoGPクラス初勝利を遂げたアレックス・マルケス(前)と、久々に2位表彰台を獲得したファビオ・クアルタラロ
60年から70年代は2ストロークと4ストロークのエンジンが混在。ストレートが速ければ勝てるという馬力重視の時代において、日本メーカーは多気筒、多段ミッションを武器にヨーロッパメーカーを圧倒した。80年代になると同一排気量なら圧倒的に有利な2ストロークに移行。同時に日本メーカー中心の戦いとなった。最高峰の500ccクラスは直列4気筒、V型3気筒、V型4気筒、スクエア4などエンジン形式もバリエーションに富み、メーカーが個性を競い合った。だが90年代になるとV型が主流になり、ホンダが「同爆(4気筒のうち2気筒ずつが同時に爆発)」を採用したエンジンを投入。これが圧倒的なアドバンテージを築き、ホンダ全盛時代がスタートした。
2000年代に入ると、最高峰クラスのエンジンは環境問題に対応して1000ccの4ストロークに変更となった。ホンダはV型エンジンを採用するが、ヤマハ、スズキ、カワサキは直4を採用。ここで登場したのが2ストロークにはなかったエンジン・コントロール・ユニット(ECU)で、MotoGPがスタートしたばかりの頃は大排気量エンジン特有の強烈なエンジンブレーキをどう克服するかが最大の課題となった。ホンダはそれをいち早く克服し、V型5気筒を採用したRC211Vで03年まで独走時代を築いた。
その後、タイトル奪還に燃えるヤマハが扱いやすく直4のパワーをうまく引き出すクロスプレーンというエンジン形式を採用。かつホンダから天才バレンティーノ・ロッシを獲得して、ひとつの時代を築いた。
日本メーカー復活を願うのは日本人だけではない
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だが近年はコスト削減とイコールコンディション化を図る技術規定の改定、さらにコロナ禍の影響もあり、ヨーロッパメーカーが主導権を握る状況が続いている。日本メーカーは表彰台にも立てないという厳しい時期を過ごしてきたが、今季はようやく変化の気配が漂ってきた。
今季はおそらくマルケス兄弟を中心としたドゥカティ勢のチャンピオン争いになるが、ドゥカティ勢が上位を独占するようなレースは確実に減っていくと思う。勝つことは難しい。勝ち続けること、チャンピオンになるのはもっと難しいと言われるが、それはメーカーの戦いでも同様である。日本メーカーのスタッフは追いつけ追い越せと常に奮闘している。そして今回のスペインGPの盛り上がりを見れば、日本メーカーの復活を願うのはヨーロッパのレースファンも同じだと実感したのだった。


