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会長退任・羽生善治“60代でのA級棋士”はあり得るか…残酷な「順位戦降級と50歳前後の壁」谷川浩司ら永世名人資格者はどう向き合ってきた?
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田丸昇Noboru Tamaru
photograph byYuki Suenaga/Kiichi Matsumoto
posted2025/04/13 06:00

谷川浩司と羽生善治。それぞれ永世名人の資格を持つ2人にあって、順位戦をどのように戦うかにも注目が集まる
16年10月に生じた「スマホ不正使用」問題の余波で、17年1~2月に将棋連盟の理事が谷川会長をはじめ5人も辞任、解任となる事態となった。そんな状況で佐藤康光九段が会長に就任すると、同期の森内は「自分も少しでも力になりたい」と痛感したという。その後、理事選挙に出て当選。専務理事に就任した後、2年後に退任した。
羽生は「まだ50代なので…頑張っていく意欲が」
羽生九段の棋歴については、要綱のみ紹介しよう。1989年に初タイトルの竜王を19歳で獲得。94年に名人を獲得。96年に前人未到の「七冠制覇」を達成。08年に名人在位5期によって、十九世名人の永世称号を取得。17年に竜王を獲得して「永世竜王」となり、同時に「永世七冠」を達成。18年に通算1434勝を挙げ、大山十五世名人の記録を抜いて単独1位。通算獲得タイトルは99期。まさに最高の「レジェンド」だ。
そんな羽生も21年度の順位戦でA級から降級。51歳だった。A級在籍は名人在位9期を含めて29期。
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羽生は「今期は内容も結果もともなわなかったので、仕方ないと思います。来期はB級1組で指します」と語った。そして24年度にB級2組に降級すると、「まだ50代なので、棋士として頑張っていく意欲があります」と明言した。大台のタイトル100期の目標があり、大山十五世名人のように60代A級も視野に入っていると思う。
羽生将棋を評して「融通無碍」と言った人がいた。順位戦で降級しても現実を受け入れて平然としている様子は、それに通じるものがある。
米長は「熟年離婚したようなもの」と
大山から羽生まで5人の永世名人の棋歴をたどってきた。名人失冠やA級降級の節目の年齢は、本文で記したように46歳から52歳までだった。昨今は「〇歳の壁」という文言があるが、永世名人には「50歳前後の壁」が立ちはだかっている。
なお、1998年に54歳でA級から降級した米長永世棋聖(A級在籍は名人1期を含めて26期)は「熟年離婚したようなもの。新しい生き方を探す転機といえる」と表現したものだ——。〈将棋特集:つづく〉
