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「謹慎明けの朝青龍にヤジが…」朝青龍vs白鵬“伝説の千秋楽相星決戦”、NHKアナは“白熱の50秒”をどう伝えたか「実況歴40年で最高の大相撲だった」
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藤井康生Yasuo Fujii
photograph byTakashi Shimizu
posted2025/05/22 11:06
気合いを入れる朝青龍に鋭い視線を送る白鵬(2008年1月)
歴史に残る名勝負は、数えきれません。しかも、大相撲ファンのそれぞれが、自分自身の尺度で名勝負を記憶にとどめています。私自身は、NHKとAbemaであわせて40年余り、大相撲の実況放送を担当してきました。その中で、この時の白鵬と朝青龍の闘いは文句なしに最高の大相撲だったと今でも思います。
昨今、力士が大型化し、四つに組んでの熱戦が少なくなりました。押し相撲が増え、取組の時間も平均して短くなりました。だからこそ、相撲の醍醐味を再発見させてくれる価値のある相撲でした。
朝青龍の引退、白鵬の全盛期へ
翌場所の千秋楽も、白鵬と朝青龍による12勝2敗同士での相星決戦となりました。ここでは朝青龍が小手投げで白鵬を下して雪辱し、22回目の優勝を果たしています。両横綱の鎬を削る時代が、まだしばらくは続くと思われました。
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しかし、その年の七月場所で朝青龍が左肘を痛めます。途中休場も含め3場所の休場。その後、朝青龍は土俵に復帰して2回の優勝を果たしますが、平成21(2009)年一月場所からの白鵬との直接対決では7連敗。完全に両横綱の力は逆転していました。
そして、平成22(2010)年一月場所中の暴力事件で、朝青龍は引退に追い込まれます。白鵬は、そこから12年近く横綱を張り続けました。今一度、両雄の熱戦を観たかった、そう思うのは私だけではないでしょう。
〈連載全5回・完/第1回から全話公開中〉
『大相撲中継アナしか語れない 土俵の魅力と秘話』(著・藤井康生/東京ニュース通信社)。名勝負から中継の舞台裏まで昭和・平成・令和の大相撲の歴史を詰め込んたファン必読の一冊
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