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「謹慎明けの朝青龍にヤジが…」朝青龍vs白鵬“伝説の千秋楽相星決戦”、NHKアナは“白熱の50秒”をどう伝えたか「実況歴40年で最高の大相撲だった」 

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藤井康生

藤井康生Yasuo Fujii

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photograph byTakashi Shimizu

posted2025/05/22 11:06

「謹慎明けの朝青龍にヤジが…」朝青龍vs白鵬“伝説の千秋楽相星決戦”、NHKアナは“白熱の50秒”をどう伝えたか「実況歴40年で最高の大相撲だった」<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

気合いを入れる朝青龍に鋭い視線を送る白鵬(2008年1月)

「さあ時間になりました、決戦です」
「日本中が注目する中で、そしてモンゴルの国の中も大騒ぎだと思います」
「白鵬でしょうか!」
「朝青龍でしょうか!」

 34代木村庄之助の軍配団扇が返りました。白鵬は右の張り差しで先手を取って右四つ。朝青龍がすぐに左を巻き替えに行きますが、これを白鵬は許さず土俵中央。白鵬は画面の向こうで左上手を引いています。白鵬十分です。朝青龍は上手が取れません。ここで白鵬が仕掛けます。両まわしを引きつけて出ようとした瞬間、朝青龍も左上手に手がかかります。右四つがっぷり。

 ここからの両者が圧巻でした。

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 そのまま互いに渾身の力で引きつけ合い。どちらも下半身が浮き上がるのを防ごうと、腰を割って踏ん張ります。これによって向正面土俵から正面土俵へ、ふたりの足の跡が轍わだちになるぐらいに、じりじりと低い体勢で両者が動きます。

 朝青龍の左足が正面の俵にかかったところで、また土俵中央に戻ります。ここで館内の歓声は「おおー」というどよめきに変わります。「意地と意地の力比べ! がっぷりです」そのあとも両力士が力を休める暇はありません。白鵬が引きつけて寄ろうとすれば、朝青龍がひきつけ返してわずかに吊り上げます。白鵬がここはしのいだ直後でした。すぐに白鵬が、左脇を十分に締めての強烈な左上手投げ。朝青龍が正面土俵で裏返しとなりました。

「上手投げーっ! 白鵬優勝! 重圧を誇りに変えました」
「熱戦でした!」
「休場明けの横綱には絶対に負けられない、その思いがこの力を生みました!」

 およそ50秒の大熱戦、そこには呼吸を整える時間もない、一瞬たりとも相手に隙を見せられない、両横綱の技能と力と意地が詰め込まれていました。

【次ページ】 「実況40年の中で最高の大相撲だった」

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