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「150キロはすごいけど…」なぜ “軟投派”エースたちはセンバツで活躍できた?「腕の振りがほとんど同じ」「コントロールとキレで勝負できる」 

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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photograph by(L)JIJI PRESS、(R)Hideki Sugiyama

posted2025/04/05 06:00

「150キロはすごいけど…」なぜ “軟投派”エースたちはセンバツで活躍できた?「腕の振りがほとんど同じ」「コントロールとキレで勝負できる」<Number Web> photograph by (L)JIJI PRESS、(R)Hideki Sugiyama

センバツで好投した浦和実業の石戸颯汰と智弁和歌山の渡邉颯人。いずれも球速は150キロに満たないが、強力打線を手玉にとった

 初戦の千葉黎明戦では90球完封の「マダックス」を達成。全試合で先発を任され、準決勝までの4試合26イニングを投げ、与四死球はわずか6個。決勝の横浜戦こそ疲労もあってか6回途中までで9失点と打ち込まれはしたが、11安打を浴びた中でも与四球は1個。準決勝までの防御率は0.35、ストライク先行で投手優位のカウントを維持する場面が多く、安定感は抜群だった。

150キロより「コントロールとキレで勝負」

 その渡邉に1月にじっくり話を聞いた時に、最速143キロであるストレートのスピードに関する質問をしたことがあったが、その際、渡邉はこう明言している。

「150キロを投げられるのは確かにすごいし、投げられたらな、というのはあります。でも自分はコントロールと球のキレで勝負できるピッチャーを目指しています」

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 今春のセンバツの渡邉はストレートの最速は143キロだった。数値にとらわれず自分の信念を貫き、140キロ前後のストレートをコーナーにしっかり決め、テンポの良さも目を引いた。

 健大高崎と初戦で激突した明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督は、石垣が負傷していることを察した上で試合前にこんなことを話していた。

「ケガをしているのなら将来のことがあるから無理しない方がいい。初戦で勝っても次(2回戦)まで中4日あるんだから。でも、ウチとしては下重君が(先発として)来るのがイヤやけれどね」

 優勝した昨春センバツではエースだったが、秋に左肘を手術をしたため今春は代打に専念した佐藤龍月、そして石垣の緊急事態の中で存在感を見せたのが下重賢慎だった。

 スライダー、カーブ、フォーク、ツーシームなど多彩な変化球を操り、コースもうまく使い分ける左スリークォーター。実はセンバツが始まる直前まで、秋以降に健大高崎と対外試合で対戦した高校の指導者から「下重君は一番厄介なピッチャー」「試合をしっかり作れるのは下重君」という評判をよく耳にしていた。馬淵監督も当然、警戒はしていたはずだ。

【次ページ】 「速い直球」より「打たれない直球」

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