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甲子園の風BACK NUMBER
「スカウト泣かせでした」某球団スカウト、声のトーンは低く…ドラフト候補“不作”な中でのホンネ評価「でもエナジックは野球界に風穴を」
posted2025/04/06 11:02

プロスカウトにとって収穫が少なかった今センバツ。しかしエナジックスポーツ高等学院の戦いぶりには感銘を受けたという
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間淳Jun Aida
photograph by
JIJI PRESS
「スカウト泣かせの大会」声のトーンは低かった
今春のセンバツは投打のかみ合った横浜が2006年以来、4度目の優勝を果たした。甲子園が高校球児のための舞台であることは言うまでもない。ただ、聖地を“戦場”とする大人もいる。その代表がプロ野球のスカウトである。
今大会もバックネット裏にはスカウトたちが集まり、スピードガンやストップウォッチを手にしたり、メモを取ったりしていた。継続的に選手を追っているスカウトの評価は、甲子園のパフォーマンスだけで決まるわけではない。だが、昨秋からの成長や大舞台での強さを見極める上で大切な場所になるという。
ドラフト候補の出場が少ないと言われた今大会は、プロ野球のスカウトに収穫があったのか。ある球団のスカウトは複雑な表情を浮かべる。
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声のトーンは、やや低い。
「いち高校野球ファンとして観戦するのであれば、非常に興味深い大会でした。スカウトの立場では、スカウト泣かせの大会でした」
高校球児の大半はプロを見据えて野球に取り組んでいるわけではない。甲子園出場を最終目標とする球児も多い。スカウトも球児の思いを当然、理解している。
甲子園への道は一本ではないため、各学校や選手は聖地にたどり着く方法を様々考える。そのアイデアや工夫が詰まった戦いが、プロから見ても「非常に興味深い大会」と映った。
“あの変則フォーム左腕”は全国の球児に…
例えば、初出場でベスト4入りした浦和実業のエース・石戸颯汰投手については「多くの投手にヒントを与えた」と評する。
足を大きく上げる変則的な投球フォームは打者がタイミングを取りづらく、リリースポイントも体に隠れて見えにくい。120キロ台の直球に打者が振り遅れるケースが目立った。
石戸は今大会で4試合全てに登板し、防御率1.04の好成績を残した。計26イニングで奪三振は7つと少ないが、打者のタイミングやバットの芯を外して凡打の山を築いた。スカウトは、こう評価する。