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「ニッポンのボールは飛ばないね」米国ファンが“NPB球”に苦言も…カブス鈴木誠也のホームラン未遂「飛距離が11m以上も失われた」「ヒット確率は97%だった」
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生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2025/03/20 11:08

3月16日、ドジャース戦でホームランを放った阪神・佐藤輝明とロバーツ監督。試合後の2ショット
MLBは、公式データ「BASEBALL SAVANT」で各打席のデータを公表している。鈴木誠也のこの打席における打球初速、角度であれば、飛距離は380フィート(約115.8メートル)から、420フィート(約128メートル)と算出された。東京ドームのセンターまでの距離は120メートルで、およそ400フィート。ホームランになってもおかしくない打球だ。しかも東京ドームだから向かい風が吹くわけもなく、昔から「ドームラン」という単語があるほど、ボールが飛ぶ球場だ。それなのに、打球は近本のグラブに収まってしまった。
このサイトでは打球データによる「期待打率」と「凡打確率」が出されるのだが、この打球の期待確率は.970で、凡打確率はわずか3%。ヒットにならなければ、おかしいというレベルだ。
つまり、こういうことだ。
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数えきれないほどのサンプル数を誇るBASEBALL SAVANTから弾き出されるデータは、この鈴木誠也の打席に限っては正確性を欠いていたことになる。
もちろん、それは各所で指摘されている通り、ボールの影響が大きいと見られ、
「日本のプロ野球のボールって、メジャーのより飛ばないんじゃん」
ということが明らかになった。これは今回の東京シリーズにおける思わぬ副産物である。
「じつはボールが変わっていた」
今回のドジャースとカブス、そして巨人と阪神との間で行われたプレシーズンゲームには、こんなルールが定められていた。
・NPB守備時はNPB公認球
・MLB守備時はMLB公認球
スポーツにおいては「公平性」が担保されなければ試合として成立しないが、今回はどちらが守備につくかでボールが変わるという極めてユニークなルールの下で試合が行われていた。日本のボールが飛ばないと仮定すれば、巨人・阪神は守備の時は飛ばないボール、攻撃時は飛ぶボールで試合が進んでいたわけで、だいぶ有利だったと考えられる。ただし、不正が行われていたわけではなく、双方の合意があったわけで、なんの問題もない。
「0.4134」NPB球は規定通りだったが…
心配なのは、日本のプロ野球の新しいシーズンのことだ。昨季に引き続き、またも点が入らない、しょっぱい試合が続くのではないか?