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「プロレス史上最大の謎」42年前のアントニオ猪木“舌出し失神事件”の真相を追う…実弟が語った衝撃の真実「病院着のままの兄貴と美津子さんを…」
posted2025/03/19 11:05

今から42年前の第1回IWGP決勝戦でのハルク・ホーガンとアントニオ猪木。この試合でホーガンの攻撃を受けた猪木は失神し、救急搬送されることに
text by

欠端大林Hiroki Kakehata
photograph by
Moritsuna Kimura
2022年、79歳で亡くなったアントニオ猪木。今なお熱烈なファンを擁する猪木だが、1983年ハルク・ホーガンとの「第1回IWGP決勝戦」で、プロレス界を揺るがす「大事件」を起こしている。「猪木舌出し失神事件」――プロレスファンの間で、いまなお語り継がれる、あまりに有名な事件だ。だが、その経緯は40年以上経ったいまも謎に包まれている。一体、あの時本当は何が起こっていたのか。事の発端は、6月2日夜のことだった――。《NumberWebノンフィクション全3回の1回目/2回目、3回目を読む》
<1983(昭和58)年6月3日、午前2時――。車体に「新日本プロレスリング」の社名が入った営業用ワゴンのハンドルを握りしめ、深夜の山手通りを渋谷方面に向かって南下する。後部座席には、数時間前まで蔵前国技館のリングに立っていた兄貴が、シートに身を沈めている。>
今年2月に上梓された猪木啓介氏(77歳)の著書『兄 私だけが知るアントニオ猪木』(講談社)のプロローグは、そんな書き出しで始まる。
「プロレス史上最大の謎」とも言われるアントニオ猪木の「舌出し失神事件」。同書には、猪木が衝撃的なKO負けを喫した当日夜のできごとが克明に記されている。
猪木実弟が語った40年前の「真実」
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「私はこれまで、あの日に起きたことの詳細を他人に話したことはありませんでした」
そう語るのはアントニオ猪木の実弟で、当時新日本プロレスの営業部員だった猪木啓介氏である。
「ただ、兄貴が他界してもう2年あまりの月日が流れました。あの事件については事実と異なる話もいろいろ伝わっていると聞き、私が直接見聞きしたことを、記録に残しておいたほうが良いのかもしれないという心境に至ったのです」
このあまりに有名な試合については、後年になってさまざまな憶測が飛び交った。
「失神は猪木の演技だった」という説が有力とされたが、もしそうであったとしても、なぜそれを実行しなければならなかったのか。生前の猪木がそれを語ったことはなく、いまも明確な結論は出ていない。