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星野仙一と落合博満の“不仲説”…落合が新幹線でピリついた“マンガ禁止令”「誰に言われたんだ?」2人の関係を知る中日OBの証言「クロマティの乱闘で…」
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岡野誠Makoto Okano
photograph byKYODO
posted2025/03/13 11:01

1986年12月、中日への入団発表で握手する星野仙一監督(当時)と落合博満
「あれは忘れられない。若い選手と同じ練習をしなさいという意味でしょう。そうしないと、示しがつかないから。ああ言われるとね、逆に抜かないんですよ。あの人は言葉の力を持っていた。選手を奮起させたり、勇気づけたりする言霊を発する。あれが監督の仕事だと思う」
周囲からどう見られているか。星野はチームのイメージにも気を配った。それは、1対4のトレードで獲得した“オレ流”三冠王の落合博満と真逆の姿勢とも言えた。
「漫画禁止です」→落合「誰に言われたんだ?」
「仙さんは、体裁や型をすごく気にする人だった。『新幹線で漫画はダメだ。週刊誌か新聞を読ませろ』とかね。カッコ悪いと感じていたんでしょう。それをさ、俺に言わせるの(笑)。グリーン車のなかを歩き回って注意しましたよ。そこに、漫画大好きな落合博満さんがいた」
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孝政が「漫画禁止なのでお願いします」と促すと、1歳年上の落合は平然と「誰に言われたんだ?」と聞いた。
「誰に言われたって決まってるでしょ(笑)。わかってて、言ってますよ。落合さんの性格だと、読み続けたでしょうけどね。仙さんは『ユニフォームの第1ボタンを閉めろ』とも言ってた。自分は2つも外して投げてたのに(笑)。そういう注意は人にやらせるんですよ」
星野は試合後、勝っても負けても必ず反省会をしていた。
「『勝って兜の緒を締めよ』という考え方の人だった。勝った日のほうがミーティングの中身は濃いし、時間も長くなる。良いことなんだけど、毎日続くとウンザリしてくる。一度ね、ナゴヤ球場のロッカーで『勝った日のミーティングはやめてもらおう』という話になったの」
勝った日は反省会不要? 星野の怒号
チームリーダーの宇野勝が「じゃあ俺、行ってきます」と腹を決めた。2階の監督室に向かおうとした時、不安を感じた孝政が「おまえ1人じゃダメだ!」と呼び止めた。
監督室をノックすると、「なんだ」とぶっきら棒な声が響いた。「失礼します」とドアを開け、緊張した面持ちの宇野が「勝った日の反省会はやめてください」と訴えた。次の瞬間、耳をつんざくような怒号が響いた。