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東大“史上最強ランナー”は欧州でエネルギー会社「事業開発ゼネラルマネージャー」になっていた…出られなかった箱根駅伝「連合チーム」に思うこと 

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別府響

別府響Hibiki Beppu

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posted2025/03/15 11:03

東大“史上最強ランナー”は欧州でエネルギー会社「事業開発ゼネラルマネージャー」になっていた…出られなかった箱根駅伝「連合チーム」に思うこと<Number Web> photograph by 本人提供

今年で47歳になる東大“史上最強ランナー”の呼び声も高い新妻拓弥。現在は欧州でエネルギー会社の事業開発ゼネラルマネージャーを務めている

 そんな新妻からすれば、当時から箱根駅伝人気の「過熱ぶり」には戸惑うこともあったという。

「インカレとかで一緒に走ってみると、箱根駅伝を目指すチームのランナーは悲壮感というか、ちょっと背負っているものが大きすぎる気がするんですよね。多分、私が予選会で好走できたり、彼らに勝てたのはそういうプレッシャーと無縁だったことも大きかったんだと思います。難しいのかもしれないですけど、もう少し楽しくというか……憧れだけでなく、箱根駅伝がそういう場になるといいんですけどね」

走ることを「主体的に楽しむ」大切さ

 そしてもっと言えば、その「競技を楽しむ」主体性こそが陸上界を離れたとき、ビジネス面にも繋がってくるのではないか……と新妻は言う。

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「例えばいま私は欧州に来ていますけど、フランスのメドックマラソン(※毎年9月にボルドーで開催されるフルマラソン。ブドウ畑がコースとなっており、給水所にはワインが並ぶ)にも出場したんですよ。それを3時間13分とかで完走して。20カ所以上の給ワイン所すべてに寄り、ハーフからフルボトルの量を飲みました(笑)。そういう話をするとやっぱりこっちの人も『お前、クレイジーだな!』と盛り上がってくれるんですよね」

 現在、新妻は気候変動への対策で水素や低炭素・脱炭素燃料の製造と利用を検討する中で、有識者としてカンファレンスに招待される機会もある。この3年間で6度の登壇機会があったという。

「そういうシーンのカクテルパーティで仕事の話とともにメドックのことも話すと大いにウケますよ。もちろん大前提である化学の知識がしっかりしているのは重要なんですけど、ビジネスの世界でも意外とそんなことが大事だったりするんですよね」

 結果を求め、悲壮感を抱えながら日々、愚直に競技に打ち込む。そして、そうしなければいけないと思い込む。ただ、それは見方を変えてみれば、知らず知らずのうちに自分の可能性を狭めているのかもしれない。

 監督やコーチからの「やらされるトレーニング」で燃え尽き、大学で競技を引退する選手の数は決して少なくない。しかも、そうしたネガティブな気持ちで取り組んだ競技からの経験値は、社会人生活にうまくつなげることができないケースも耳にする。

【次ページ】 「学生連合チーム」への想いは…?

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