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東大“史上最強ランナー”は欧州でエネルギー会社「事業開発ゼネラルマネージャー」になっていた…出られなかった箱根駅伝「連合チーム」に思うこと

posted2025/03/15 11:03

 
東大“史上最強ランナー”は欧州でエネルギー会社「事業開発ゼネラルマネージャー」になっていた…出られなかった箱根駅伝「連合チーム」に思うこと<Number Web> photograph by 本人提供

今年で47歳になる東大“史上最強ランナー”の呼び声も高い新妻拓弥。現在は欧州でエネルギー会社の事業開発ゼネラルマネージャーを務めている

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別府響

別府響Hibiki Beppu

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 年始の箱根駅伝で話題となった学生連合チームの東大生ランナーによる「赤門リレー」。非強化校の最難関国立大にも強力なランナーがいることを世間に印象付けた格好だが、実は過去、東大には更なる実績を残した選手もいた。時代に恵まれず、箱根路を走ることはなかった「異色の天才ランナー」とは何者だったのだろうか?《NumberWebインタビュー全3回の3回目/1回目2回目を読む》

 日本最難関の東京大学の学生ながら、3年時以降に学生陸上界トップクラスの結果を残した新妻拓弥。4年生になる頃には、実業団からの誘いがいくつか届いていた。

 新妻自身も学生時代に達成できなかった日本一、ひいては世界の舞台で戦うことへの憧れもあった。ただその一方で、大学での研究自体も楽しくなってきていた。

「化学システム工学科というところで学んでいまして。ざっくり言えば空気中の二酸化炭素をどう吸収するかとか、電気をいかに効率よく作るかとか、そういう研究をする分野ですね」

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 新妻が在学していた当時は、ちょうど世界的な環境問題やエネルギー問題が話題になりはじめたころだった。

「世界的な問題の解決に自分が手を動かすことで、ちょっとでも役に立つというのは非常にやりがいのあることだなというのを感じていたんです」

 当然、研究を続けるとなれば、大学院に進むことになる。

「日本一」「世界」への憧れはあったが…?

 いまでこそ実業団に所属しながら大学院へ通う選手も出てきているが、当時の新妻にはそんな選択肢が浮かばなかった。スポーツはスポーツ、学業は学業。文武両道というお題目こそあれど、上に行けば行くほど文と武の間には明確な線が引かれ、現実的にそれは絵空事にすぎない時代でもあった。

 結局、大学院への進学を決めた新妻のもとには、それ以降実業団のオファーが届くことはなかった。

「もしかしたら、もうちょっと調べたら両立の道もあったのかもしれないですけどね」

 後悔というほどのものではない。ただ、違う道もあったかもしれない。そんな「もしも」を想像したように、新妻は苦笑する。

【次ページ】 卒業後は大手エネルギー会社に入社

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