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東大“史上最強ランナー”は欧州でエネルギー会社「事業開発ゼネラルマネージャー」になっていた…出られなかった箱根駅伝「連合チーム」に思うこと
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph by本人提供
posted2025/03/15 11:03

今年で47歳になる東大“史上最強ランナー”の呼び声も高い新妻拓弥。現在は欧州でエネルギー会社の事業開発ゼネラルマネージャーを務めている
「トレーニング方法にしても、私は私のやり方を貫いて伸びましたし、結局人それぞれなんだと思います。箱根駅伝を目指すにしても、本当はそんなに20kmに特化しなくてもいいのかもしれないですよね。個人的には5000mが走れれば20kmって走れちゃうと思うんですよ。そのくらいの柔軟な考え方も大事だと思います」
そんな柔軟性と先入観のない思考こそが、新妻の一番の武器なのかもしれない。
学生時代にほとんどやらなかった朝練も、年を重ねたいまは日常的に導入しているという。
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「やっぱり仕事があって、子供も生まれて……となると、もう自分の時間が朝しかないんですよ(笑)。学生時代のようにはいかないですけど、それならそれである時間でやるしかない。不思議なものです。今日も朝5時に起きて10kmほど走りました」
「学生連合チーム」への想いは…?
年始に赤門の後輩たちがタスキをつないだ学生連合チームについても聞くと、こんなリクエストが口をついた。
「やっぱり選ばれて終わりじゃ面白くないですよね」
今年の8区を走った秋吉拓真(3年)のように、区間の途中記録で「東大のランナーがトップ」となればメディアは色めき立つ。中継でも当然、盛り上がる。ただ、それだけで終わってほしくはないという。
「連合チームという制度は本当に素晴らしいと思います。多くの選手に箱根駅伝を走るチャンスができるし、多様性の観点からも良いことだと思います。ただ、『走ることに意義がある』というのも一定の理解はしますが、やっぱり後ろを走っていたら面白くないですよね。楽しむことは忘れずに、みんなで本気で上位を目指して盛り上げてほしいと思います」
「連合チームだからしかたない」という多くの人が抱きがちな先入観は、新妻のなかには存在しないのだ。
もし新妻があと数年遅く生まれていたら。そして、もし連合チームに選ばれていたら――。
スポーツの世界にタラレバはないけれど、過去にないほどに箱根路を盛り上げていたのかもしれない。
