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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「この人と結婚するんだろうな…」レスリング登坂絵莉が語る“コワモテ”7歳上の格闘家との結婚秘話「妊娠中もトレーニング」目指した競技復帰
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph byWataru Sato
posted2025/03/06 11:01
子育てに奮闘しながら様々な活動を積極的に行っている元レスリング金メダリストの登坂絵莉さん
「今もそうですが、当時もママで現役を続けている選手が少なかったんです。それが実現できたらいいなと考えていました。復帰して試合で勝つことももちろん大切ですが、母親として現役を続けることに価値があると感じていて。東京五輪の選考から漏れた後でしたし、出産した後に子育てをしながらもう一度オリンピックを目指すのも簡単なことではないと分かっていましたが、そこに新しい価値を見出したというか。ちょうどその頃は怪我もしていたので、妊娠出産の期間でなんとか良くならないかな……という気持ちもあったんです」
アスリートから遠ざかる体に…
妊娠中もトレーニングを続けていたが、体重が増え、胸が大きくなり、体は徐々にアスリートから遠ざかっていった。
「嬉しさと寂しさが入り混じるような気持ちでしたね」
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出産直後には「寝転がって起き上がれないんですよ。腹筋できない人ってこんな気持ちなんだと思って(笑)。お腹のどこに力を入れていいのか分からなかったですね」という経験も。産後もマットに戻ることを見据えてトレーニングを再開していたが、期待していた怪我の回復に想像以上に時間がかかっていた。
「この状態では自分がやりたいパフォーマンスができない」
育児とトレーニングの両立
約半年間、育児をしながらトレーニングを行うなかで競技との両立の難しさも痛感した。
「里帰り出産をした直後は子どもを預けて走りに行ったり、自宅に戻ってからも夫に見てもらえる範囲内でトレーニングしていました。その後もトレーニングは続けていましたが、基本的に大学生の時間に合わせて練習していて、朝は7時スタート、夜は17時とか18時スタートということが多かったんです。
その時間ってちょうど保育園が始まる前や終わった後で……。練習が夜だと子どもを預けられる場所がないんです。競技に戻るのもやっぱり中途半端ではダメだし、やっぱり勝ち負けがつくと負けたくないんですよね。いろいろと現実を突きつけられたときに、それを乗り越えようという思いが足りなかったんだと思います」
産後復帰の難しさ
産後復帰するアスリートも徐々に増えてきているが、まだまだ十分に環境が整っているとは言い難い。
「たとえば合宿の練習中に子供を見てもらえたとしても、練習後、すぐに育児となると回復する時間がない。そのあたりの環境が整えばより競技を続けやすいと思いますね」
そういった体制が整っていれば、もしかしたら登坂さんも今も競技を続けていたかもしれない。
だが、今は子育てに大きなやりがいや幸せを感じている。3歳半になる長男の子育ては成長が感じられて楽しい反面、レスリングの厳しいトレーニングとはまた違う大変さもある。
「"かわいい"の方が上回っています」
「夜通し寝てくれる子だったので、想像していたよりは楽な方ではあったと思います。どちらかというと今の方が大変で。落ち着きがないというか、常に走りまわっているから、なかなか私も落ち着けなくて。
それに3歳くらいになると、私たちが話すことも理解できるようになってくるのでごまかしもきかなくなってくるんです(笑)。YouTubeを見ているときに『もう少し見たらおしまいだよ』と息子に言う傍で私がスマートフォンを触っていると『ママも触っているから』と反抗したり(笑)」
ただそんな姿さえも「かわいい」と目を細める。



