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サークル出身の経歴は「マイナスに取られることが多かったです」大阪国際女子マラソンで衝撃の日本人1位…23歳新ヒロインが実業団入社までの波乱万丈
text by

山崎ダイDai Yamazaki
photograph byAFLO
posted2025/03/02 11:02
大阪国際女子マラソンで日本歴代10位の好記録で日本人トップに入った小林香菜。現在所属の大塚製薬に入社するまでは紆余曲折があったという
もうひとつ。話を聞いて感じたのが、小林のもつ不思議な視座の高さだ。
当初、いくつもの実業団に断られながら、河野監督に入社を直訴した。もちろん監督の人間性や部の雰囲気が大きな要素だったのは間違いない。だが、加えて本人の言葉を借りれば、「マラソンで世界で戦った選手を育てているから」というのも大きかったのだという。
たしかに大塚製薬の女子マラソンでは過去、伊藤舞(現コーチ)という日本代表選手も送り出した実績がある。だが、そもそも入社できるかどうかもわからない段階で、「世界を目指せる」環境かどうかを気にするあたりの小林のアンバランスさは興味深い。
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強豪で、実績があるチームであればあるほど、課される重圧や責任は当然大きくなる。クレバーな小林だからこそ、大学時代の環境から激変するリスクを取るのは不思議にも思えた。
――まずは入社しやすいチームに入って、力をつける選択肢もあったのでは?
そんな疑問を投げかけると、「うふふ」と笑ってこんな答えが返ってきた。
「でも、覚悟は決めてきているので」
最初から高みを目指していたその意識の高さが、豊富な練習量と合わさることで、日本トップクラスのランナーたちを一蹴してみせたのかもしれない。
「まだまだメンタルが市民ランナー」と本人
本人は「まだまだメンタルが市民ランナーなんで」とおどけてみせる。
「いまは本当に変な感じです。鈴木選手なんていまだに憧れの存在だと感じてしまうし……その辺のマインドは今後の課題だと思います。あとは、いまはうまくいっているけど、私は練習量がこなせないと心身ともに絶対にダメなタイプ。だからこそ人一倍、ケガには注意していますが、現役生活では絶対にそういうフェーズもあると思っています。その時にどうするか――というのも今のうちから考えないといけないなと思っています」
ライバル選手の印象を語る際のリスペクトは、「市民ランナーのマインド」というのが妙に納得がいく。その一方で、不思議と冷静に先のことまで計算している。このギャップこそが小林の魅力なのだろう。
様々な意味で規格外のシンデレラガール。ここから先、果たしてどこまで突き抜けていくのだろうか。


